トヨタの社長交代にはどんな意味があるのか。元東京大学特任教授の村沢義久さんは「トヨタはEV戦略の見直しを迫られており、今回のトップ交代はそれを踏まえたものではないか」という――。
本当に「電撃交代」だったのか?
1月26日、トヨタが社長の交代を発表した。2009年の就任以来、実に14年間にわたりトヨタの舵取りを担った豊田章男社長は、佐藤恒治執行役員に後を託し、代表権のある会長に就任する。
今回の交代劇について、「政府筋の圧力が働いた」「社長ではなく会長の交代が狙いだ」等々、さまざまな臆測も流れているようだ。
豊田章男氏の社長としての功績は明らかだ。なにしろ、リーマンショックで落ち込んだトヨタの業績を立て直し、その上世界一の自動車メーカーの地位に押し上げたのだから。経営者として抜きんでた実績と言っていい。
トヨタの今回の社長交代に関しては驚いた人が多かったようだ。スズキの鈴木俊宏社長が「非常にびっくりした」とコメントしているように、「電撃交代」と受け止められたようだ。
しかし、本当に誰にも予想できなかったのだろうか。
拙著『日本車敗北』(プレジデント社)を刊行して以来、筆者の元に、一部のサプライヤーや業界関係者からのコンタクトが多数あった。
中でも昨年の夏以降は、噂や臆測を含めて、さまざまな報告や相談が寄せられていた。
そうした「現場の声」を聞くかぎり、少なからぬ業界関係者が、今回の社長交代をある程度予想していたようにも思われる。