トヨタの社長交代にはどんな意味があるのか。元東京大学特任教授の村沢義久さんは「トヨタはEV戦略の見直しを迫られており、今回のトップ交代はそれを踏まえたものではないか」という――。
改造車の祭典「東京オートサロン」に登場したトヨタ自動車の豊田章男社長(手前右)と佐藤恒治執行役員(同左)=千葉市の幕張メッセ(2022年1月13日撮影)
写真=時事通信フォト
改造車の祭典「東京オートサロン」に登場したトヨタ自動車の豊田章男社長(手前右)と佐藤恒治執行役員(同左)=千葉市の幕張メッセ(2022年1月13日撮影)

本当に「電撃交代」だったのか?

1月26日、トヨタが社長の交代を発表した。2009年の就任以来、実に14年間にわたりトヨタの舵取りを担った豊田章男社長は、佐藤恒治執行役員に後を託し、代表権のある会長に就任する。

今回の交代劇について、「政府筋の圧力が働いた」「社長ではなく会長の交代が狙いだ」等々、さまざまな臆測も流れているようだ。

豊田章男氏の社長としての功績は明らかだ。なにしろ、リーマンショックで落ち込んだトヨタの業績を立て直し、その上世界一の自動車メーカーの地位に押し上げたのだから。経営者として抜きんでた実績と言っていい。

トヨタの今回の社長交代に関しては驚いた人が多かったようだ。スズキの鈴木俊宏社長が「非常にびっくりした」とコメントしているように、「電撃交代」と受け止められたようだ。

しかし、本当に誰にも予想できなかったのだろうか。

拙著『日本車敗北』(プレジデント社)を刊行して以来、筆者の元に、一部のサプライヤーや業界関係者からのコンタクトが多数あった。

中でも昨年の夏以降は、噂や臆測を含めて、さまざまな報告や相談が寄せられていた。

そうした「現場の声」を聞くかぎり、少なからぬ業界関係者が、今回の社長交代をある程度予想していたようにも思われる。