コロナ禍で鉄道業界は大きな打撃を受けた。外出機会が減り、本業の鉄道事業だけでなく、駅ナカや広告などの関連事業も低迷した。ただし、JR各社の収益は一様ではない。鉄道ビジネス研究会『ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩』(ワニブックスPLUS新書)より、一部を紹介する――。(第1回/全2回)

「倒産級」の売上減を経験したJR東日本

鉄道会社に「待っていれば客が増える」という状況は訪れない。今回のコロナ禍での乗客減は、今後訪れるかもしれない状況を先だって経験したといえる。

では、まず各社どのくらい売上や利益が減ったのかを見ていこう。国内売上最大のJR東日本から確認していく。

JR東日本の2019年3月期、つまり2018年度の売上は、鉄道収益が2兆380億円であった。そのほかの事業での収益が9637億円あり、売上合計で3兆18億円、営業利益は4848億円に及ぶ。コロナ禍がまったく影響していない年の売上なので、この3兆円という額が、JR東日本の“通常の実力”といえる。

コロナ禍が終盤で影響した2019年度は売上2兆9466億円で1.8%減でしかない。しかし、コロナ禍が広がりを見せた2020年度、鉄道収益は45.1%減の1兆957億円となった。その他の事業が29.8%減に留まったため、全体では40.1%減となったが、平時に売上が40%減となれば、経営者の脳裏には倒産の2文字が浮かぶ。

“過去最悪”の決算、計り知れないコロナの影響

営業損失は5203億円に及び、2018年度の営業利益が丸々吹っ飛んでなお足りない額だ。

2019年度のコロナ禍の影響は対前年比1.8%減という数字だけ見れば軽微に思える。しかし、前年の売上に達することを目標にしている企業などないわけで、売上増に向けていろいろなプロジェクトを進めている。そうしたなかでの減収が、軽微なわけはない。JR東日本は、同年度の新型コロナウイルス感染症の影響額を約940億円の減収とみている。

ちなみに、会社設立以来最大の下げ幅となった2020年度の決算においては、もはやコロナ禍の影響額は明示していない。同社は2022年度内に鉄道収益はコロナ禍前の約90%にまで回復すると仮定しているが、社会の構造変化の影響は継続すると考えており、台風などの災害とはとらえ方が異なる。