問題は、この1000万円を稼ぐためにいくらコストがかかっているか、である。営業費用は2017年が2億1800万円。ちなみに2018年は2億1500万円で、乗客が多少増えてもコストはそう変わらない。企業経営の面ではただただ驚くばかりだが、収益の22倍近いコストがかかっているわけだ。2017年の営業損益は実に2億700万円(編注:100万円以下を切り捨てにしているため、右記の数字による計算とは合致しない)。
石勝線の同区間は運行し続けると毎年2億円近い赤字を生むことになる。経営の一般論で考えれば廃止は妥当といわざるを得ない。
鉄道運行のコスト削減が起こした悲劇
路線の赤字解消のためにやれることは多くはない。乗客増での売上アップが困難ななかにあって、採られる方法はコスト削減だ。
2022年3月のダイヤ改正で、日光線に大きな問題が発生した。いわゆる“積み残し”である。積み残しとは、乗ろうとした客がすべて乗車できない状態だ。首都圏であれば、次の電車で10分以内に到着するが、地方ではそうはいかない。
このダイヤ改正において、朝の運行本数が減り、4両編成から1両減らされ3両編成となり、さらにワンマン化がなされている。コスト削減として最も端的な方法ではあるが、乗客の利便性を著しく損なってまでやることではない。
積み残しは“決まった時間で移動できる”という鉄道に対する最大の期待を裏切るものだ。この積み残しによって乗れなかった高校生が学校に遅刻してしまったことから、大きな問題となった。ダイヤ改正検討時の見込みが甘かったとしかいいようがないが、通学を鉄道に頼らざるを得ない高校生、特に地方においては重要な客となる高校生の利便性を損なうようでは地方における鉄道の意義が揺らぐ。
乗客減(売上減)と運行コストと利便性のバランスが、今後のダイヤ改正にはシビアに求められる。