関連事業の収益も大量輸送あってこそ

売上減を多少やわらげる役割を果たした鉄道以外の事業は、収益がおよそ年間1兆円ある。このその他の事業には、キオスクなどの駅構内にある売店やベックスコーヒーショップなどの飲食店、ルミネやアトレなどのショッピングセンター、コンビニエンスストアなどの決済で利用している人も多いSuica事業などがある。

その他の事業でがんばればいいという考え方もあるが、これらの事業は鉄道を多くの人が利用することでより収益が上がる。特に駅構内の売店などは、乗客の数が売上に直接かかわってくる。駅に近い、もしくは駅の中にあるという好立地で利益を上げていた事業が、その強みを生かせなくなるわけで、乗客減はその他の関連事業にとっても影響は大きい。

JR東日本は、小売・飲食、広告などの流通・サービス業を駅スペースの創出等の事業と位置付けている。その流通・サービス事業の2019年度の収益は5020億円で、営業利益は343億円だった。それが2020年度は売上3180億円、赤字となり135億円の営業損失が出た。

収益は37%減となったが、この減少率は山手線駅の利用者の減少率、36.5%減と同規模だ。鉄道の利用者が減れば、その分、その他の関連事業も減るという結果になっている。ほかにも、首都圏で通勤する人はお気づきだと思うが、車両内の広告がかなり減っている。駅を使う人が減れば、駅の広告のニーズも下がるわけで、この広告事業も減収となっている。

柱の一つ、不動産・ホテル事業が好調

こうした苦戦を強いられたなかで迎えた翌2021年度は、収益は12.1%増となった。赤字額は1539億円まで圧縮され、この額は前年の3分の1以下だ。ただ、少し気になるのは、鉄道収益が16.5%増となりながら、関連事業は4.9%増に留まってしまったこと。

JR東日本によると駅構内店舗の売上は増加したものの、「収益認識に関する会計基準」の適用により減収したとのこと。この会計基準はかなり大雑把にいうと売上を会計上いつ計上するかを定めたルールで、2021年度から強制適用となった。法の詳細はここでは避けるが、いずれにせよ駅ナカの売上は上がっているようだ。

一方、関連事業のもうひとつの柱である不動産ホテル事業が増収となったことで、4.9%増になった。不動産・ホテル事業で「回転型ビジネスモデル」を取り入れており、これが功を奏している。