新宿・歌舞伎町には、ホストに多額のお金をつぎ込む“ホス狂い”と呼ばれる女性たちがいる。月300万円以上も使うというホス狂いの多くは、風俗店で働いている。なぜ風俗店で働いてまで、ホストに貢ぐようになったのか。ライター・國友公司さんの著書『ルポ歌舞伎町』(彩図社)より紹介しよう――。(第2回)

ホス狂い風俗嬢に人気の川崎・千葉エリア

ホスト業界において「エース」とは、ホストから見て自分に一番金を使ってくれる客を指す専門用語である。当然、ホストはエースの女の子をもっとも大切に扱うため、ホス狂いたちは競い合いながらエースを目指す。歌舞伎町にはじつに200店舗のホストクラブがある。各店舗の人気ホストたちそれぞれにエースがいるのだから、歌舞伎町には肩の温まったエースが何人もいることになる。

担当ホストと一緒に歌舞伎町を歩く女性
筆者撮影
担当ホストと一緒に歌舞伎町を歩く女性

そのエースたちが一堂に集まる「A」というソープランドグループがある。パ・リーグで考えるならば、山本、千賀、髙橋光成、則本、佐々木朗希、上沢が一球団に集結しているようなものだ。球団の経営をかなり圧迫しそうではあるが、打者が小粒揃いだとしてもリーグ優勝間違いなしだ。

Aは川崎・千葉・大宮に店舗を持つ。大宮の店舗は激安を売りにしており、ホス狂いが集合しているのは川崎と千葉にあるソープランドだ。歌舞伎町でエースを張っている友人に「めっちゃ稼げるから一緒に行こーよー」と誘われ、キャバ嬢兼風俗嬢のアユもAのソープランドに在籍していたことがあった。

「歌舞伎町からだと川崎ってアクセスがかなりいいので、ホス狂いには川崎は人気なんです。千葉の店舗に行くときはみんな特急しおさいを使いがちです」

特急しおさいは東京―銚子を時速130キロで走り抜ける。本数は2~3時間に1本。わざわざ東京から千葉に向かうため、同店のソープ嬢たちは朝イチから出勤してガッツリ稼ぐ傾向にある。そのため、朝の特急しおさいの車内におけるホス狂い率はすこぶる高い。特急しおさいは男たちにひとときの夢を運ぶ列車なのである。