全てはエルドアンのせいだ。彼は自分一人に権力を集中させ、公共機関の独立性を奪い、自分に忠実なだけで無能な者を要職に就け、自分の決定に従わない市民団体を一掃するという乱暴な政策を取り続けてきた。

地震の多いトルコにとって、災害対応に当たるAFADは極めて重要な国家機関だ。だが、その予算は首相府宗教庁(本来は宗教団体を監督する役所だったが、エルドアン政権下では政府の施策に宗教的正当性を与えるためのツールと化している)の予算より少ない。ちなみに、現在のAFADで災害時緊急対応を仕切る人物も神学者で、災害対策の経験は皆無だ。

99年には地震発生から数時間で現場に急行し、捜索・救助活動に当たった軍隊も、16年のクーデター未遂以後は弱体化し、エルドアンの私兵と化しつつある。

かつての軍隊は、災害時には政府の命令がなくても出動できた。しかしエルドアン政権は、この権限を取り消した。そのせいで今回は、被災地への部隊派遣が遅れた。

巨大地震は多くの人命を奪う。だがトルコのような国では人災で被害者が増える。建物の耐震基準が守られず、実務能力がなくても大統領への忠誠心があれば要職に就ける世の中で、公共機関には独立性がなく、良心的な市民団体は排除されているからだ。

私の妹とその夫が身内の遺体を瓦礫の下から引きずり出し、きちんと埋葬しようとしていた頃、エルドアンは国営放送を通じて、国の対応に不満を言う者は「恩知らず」だと罵り、今回の惨劇も以前の災害も「運命」として受け入れろと語っていた。

でも、今はもうみんな気付いている。この国の抱える厄介な問題の全ては一人の男に行き着くのだと。

From Foreign Policy Magazine

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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