現地で唯一の空港の滑走路は、割れて使えなくなった。活断層の真上に造られていたからだ。工事をしたのはエルドアンとつながる会社だった。

今回だけではない。大統領絡みの利権で決まったインフラ事業は、過去にも数々の悲劇を招いてきた。例えば昨年、豪雪に見舞われた南西部の都市イスパルタでは何週間も停電が続き、複数の住民が凍死した。あそこの電力事業は民営化され、大統領の身内が支配する複数の企業に売り飛ばされていた。

そうした企業は不慮の災害への備えを怠り、いざ停電が起きても対応できず、野党系の支援団体が現地に入るのも妨害した。当然のことながら、住民の間からは激しい怒りの声が上がった。

2018年には北西部の町チョルルで保守作業の不備による列車事故が発生し、子供を含む25人が死亡した。14年にはエーゲ海に面するソマの炭鉱で爆発が起き、坑内にいた787人の作業員のうち301人が一酸化炭素中毒で死亡している。

この炭鉱を保有する会社のアルプ・グルカンという男も、エルドアンの側近だった。彼の会社はAKP政権による「民営化」で事業を拡大し、建設業にも手を広げ、莫大な利益を手にしていた。

野党や鉱山労働者は以前から安全対策の不備を指摘していた。事故の20日前には議会で、鉱山への立ち入り調査を求める野党の動議が与党AKPによって否決されていた。

こうした人災はエルドアンとその仲間による安全軽視で頻発していた。いつでも政府の対応は遅く、不十分で、被害を一段と深刻にした。

21年にはトルコ南部で大規模な山火事が発生し、少なくとも9人が死亡、数千人が避難を余儀なくされた。こうした事態への備えが足りなかったこと、政府の対応が遅かったことは明らかで、エルドアンは激しい批判を浴びた。

野党や地域住民によれば、政府は環境への配慮を欠く開発業者に認可を与える一方、森林火災に備えた消火用の飛行機さえ用意していなかった。後に政府は、消防隊に飛行機はあったが一機も飛べない状態だったと認めている。

今回の地震でも、政府の対応は似たようなものだった。アンタキヤでは私の家族も、素手で瓦礫を取り除き、閉じ込められた身内の者を救出しようとした。国の救援隊は、地震発生から48時間後にようやく到着した。よその救助活動を優先しろと命令されたので、ここへ来るのは遅れた。彼らはそう言っていた。

腐敗した一部の利益優先

トルコ軍も現場で救助・支援活動を行えたはずだが、エルドアンは軍隊の災害出動をためらった。99年の地震では住民支援に重要な役割を果たした各種の市民団体も、既に解散させられていた。