問題解決にあたって何が最大の要因か
【マッキンゼーで学んだ基本原則2】
――問題の構造を把握する
では、本質的な問題を見極めるにはどうしたらいいか? マッキンゼー流の問題解決の原則として、「問題の構造を把握する」ということがあります。これは問題を見える化するために行う作業で、目の前の事象とその要因を分けて考えることです。
先ほどのAさんのミスが多いという問題の場合、ミスが起きているという事象と、その要因を分けて考える。そして、いくつか要因を挙げた上で、それらがどのように関連し合って事象が起きているかを構造的に把握するのです。
そこでAさんに話を聞き、行動などをチェックしたところ、Aさんが作業中に電話や来客の対応にすべて応じていることが判明しました。つまり、「他の仕事に時間と労力を割かれている」という状況が浮かび上がってきたのです。
【マッキンゼーで学んだ基本原則3】
――仮説を立てて検証する
基本原則2で事象と要因を分離し、要因をいくつか挙げたとしましょう。そのすべてを解決しなければならないというわけではありません。要因の中には決定的なものもあれば、あまり重要性のないもの、あるいは実際はほとんど関係ないものまで差があります。
問題解決にあたっての優先順位は、当然重要度の高い要因から、解決しなければなりません。何が一番大事な要因かは、まず仮説を立てて、それを検証するというのがマッキンゼー流です。
先のAさんの場合、集中力の欠如が主要な問題と考えて掘り下げたわけですが、おそらくここに問題があるに違いない。そういう直感に近い感覚が、それまでの経験や事例などによってある程度見極められるはずです。
その上で、たとえばAさんの基本的な能力の欠如であるとか、精神的に不安定であるなどの別の要因を検証し、どうやらそれらが当てはまらないとなれば、集中力の欠如こそ最大の要因ではないかと結論づけることができるでしょう。
たとえば、作業に集中できない環境を改善し、その時間帯だけは電話や来客の作業を他の社員たちが分担することで、Aさんのミスを劇的に減らすことができるかもしれません。
このように、今度はそれをどう解決していくか、具体策を考えるという段階になります。
現状把握、解釈、対応の順に感情を課題化する
【マッキンゼーで学んだ基本原則4】
――解決策を導き出す〈空・雨・傘の理論〉
問題を分解し、検証した上で、最適な「解決策」を打ち出さなければなりません。
そこでマッキンゼーで行っている方法が「空・雨・傘」の思考です。
空とは「現状がどうなっているか」という事実であり、雨とは「その現状が何を意味するのか」という意味合い、つまり現状の解釈です。そして傘は「その意味合いから、では何をするのか」という解決策です。
ですから先に述べた基本原則1が「空」であり、基本原則2と3が「雨」だということです。
あらためて先ほどのAさんのミスの例に当てはめると、「空」はAさんがミスを連発している状態を把握することです。
「雨」とは問題の構造を把握し、分析して検証することで、そのミスが仕事の分担ができていないことによる注意力の分散であるという分析です。「傘」は仕事の分担を明確にするという解決策ということになります。
感情コントロールもこの思考が有効です。
まず現在の感情の状態を客観的に把握する(空)。そしてその感情がどのようなメカニズムで起きていて、真の原因は何かを突き止める(雨)。それによってどう対応すればいいかを決定する(傘)。
「空・雨・傘」の思考によってモヤモヤした感情も解決すべき問題となり、問題化することで自ずと解決へと進んでいくのです。