些細な問題で「悩まない」ためのシンプルな行動原理

営業成績を上げる、新企画を考え実行する、人材育成をする……それぞれの役割と目標がある。目標を達成するために、最善の判断と行動を取る。

仕事ができ、人柄もすばらしい人たちの行動原則はじつにシンプルなのです。とくに、彼らは負の感情にとらわれることが、ほとんどありません。

ところが、そこに感情を持ち込むと、途端に仕事が複雑で面倒なものに変わってくる。仕事ができない人、遅い人は、自分の感情の乱れをそのまま仕事に持ち込み、思い悩み、逡巡し、どんどん仕事を複雑にしていくのです。

逆に尊敬できるビジネスパーソンの仕事の仕方は明瞭です。彼らは割り切りが早い。たとえば自分がやるべきこととやらなくてよいこと、自分がコントロールできることとできないこと、目標達成に必要なこととその優先順位……etc.

そして、やるべきこと、やれることはすぐに手をつける。悩んでも仕方ないものは悩まずスルーする。

仕事ができる人の特徴の1つは「悩まない」ということです。悩んだり、感情にとらわれている状態というのは、思考が混乱し、一種のパニックを起こしている状態だと言っていいかもしれません。

夕暮れ時の青空と白いドレスを着た女性
写真=iStock.com/west
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「悩まない」で仕事をするなんて自分にはできない――。そんな声が聞こえてきそうです。

でも大丈夫。なぜなら、心乱れ、悩みまくっていた私自身も変わることができたのですから。以下でそのための方法をさらに紹介していきましょう。

隠れている真の問題を“見える化”する

マッキンゼーで叩き込まれたコンサルティングの究極の目的は、隠れている真の問題を見える化させるというもの。たとえば売り上げが伸び悩み、営業を改善したいという依頼が来たとします。

その際、新規獲得を狙うか、既存顧客のフォローに力を入れるのか? 販促活動をどうすればいいか? など営業戦略に目を奪われがちです。

しかし、よく話を聞き、現場を見ていると、問題は営業戦略ではなく、組織内、組織間の意思伝達がうまくいっていないということだと分かってくる。

隠れていた真の問題を顕在化させ、解決すべき課題にすること――。これこそが経営コンサルタントの仕事であり、マッキンゼーで私が学んだことなのです。

クライアントには見えないものを見える化する。問題が見えてくれば、それだけですでに問題解決への一歩を踏み出したことになるのです。

そのために、対象をロジカルに分析することが大前提となります。固定概念を捨て情報を収集し、ロジカルに分析して問題点を探り出す。

感情コントロールも、まさに同じ構図が当てはまります。イライラしたり怒ったり不安になって落ち込んだり……。感情の乱れは、内在している問題を明確にすることができていないために生まれるのです。

問題がわからないから、解決することもできない。モヤモヤした中で、悩みや葛藤が生まれ、イライラや怒りなどの感情がうごめき出す。逆に感情の乱れの背後にある問題を明確にし、意識化すれば、感情に流されず問題解決に向かうことができるのです。

「悩みにせずに問題にする」と表現すると、分かりやすいかもしれません。「悩み」とは、何か事が起きたときに、その問題の解決策が浮かばず、どう対応すればよいか分からない場合に生まれるものです。つまり、思考がフリーズした状態です。

悩みを「解決すべき問題」にしてしまえば、後はそれをどう解決していくか、という必然的な流れになります。ですから、悩まずにどんどん仕事を進めていく人は、

「問題化する力が高い」人ということもできるでしょう。