相手にネガティブな感情を和やかに伝えるにはどうすればいいか。元マッキンゼーでエグゼクティブコーチの大嶋祥誉さんは「ネガティブな内容でも『先取り言葉』を枕詞にすれば、相手を非難せず、冷静に受け止めてもらうことができる」という――。

※本稿は、大嶋祥誉『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

会議で説明するアジアのビジネスウーマン
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コミュニケーションの基本は「相手を受け入れること」

上手に感情をコントロールすることができる人は、上手に他者とコミュニケーションができる人です。他者とのコミュニケーションがうまくいかなければ、ストレスになり、感情が乱れがちになります。

一方、コミュニケーション力が高く、多くの人と良好な関係を築ける人は、当然ストレスが少なく、感情も安定しやすくなります。

まず、コミュニケーションの基本は、相手を受け入れるということです。その際に勘違いしがちなのが、正しい結論を導くのがコミュニケーションだと思ってしまうこと。

【Aさん】「嫌な上司がいてね。昨日も細かいことをグダグダ注意するのよ」

【B君】「注意してくれる上司こそ自分のためになるはずだよ。細かいことが大切かもしれないし」

【Aさん】「それはそうかもしれないけど……」

【B君】「自分から改めなければ、いい関係は築けないよ」

B君が言っていることは正論ですが、正論を語り、解決策を探ることがコミュニケーションとは限りません。AさんはたんにB君に自分の気持ちに、共感してほしいと思っているだけかもしれません。

早急に結論を出す目的の会議などは別にして、日常会話であってもビジネス会話であっても、解決策を求めているより、まずは話を聞いてほしいという場合が、圧倒的に多いと思います。「それは大変だね」とか、「気持ちはよく分かるよ」と、まず相手に共感を示し、受け入れる。

人間は誰しも承認欲求があります。コミュニケーションの基本は、相手の承認欲求を満たすこと。正論や解決策を主張するのではなく、相手に共感することです。

ただし、これがなかなか難しい。真面目な人ほど、つい正論を語ってしまいがちです。また、何とか解決策を提示しなければ、と思い込んでしまう。悪気はないのですが、つい先走ってしまうのです。

もう1つ、相手より自分が上であることを示したい、という意識の強い人がやりがちなのが「マウンティング」です。相手を支配下に置きたいという潜在的な意識がある人は、相手を否定することで自分が優位に立とうとするのです。

自分が否定されることを望む人などいないでしょう。相手がマウントしてくるのを、「はい、そうですか」と受け入れる人もいないはずです。

たいていの場合は「そんなこと言われても」「そういうあなたこそ……」と反発されます。良いコミュニケーションも人間関係もつくることが難しくなります。