人間関係の質が感情の安定につながる

では、自己肯定感が低い人は、良い関係を築くことができないのでしょうか? そんなことはありません。とにかく相手の話を傾聴し、相手の気持ちに共感してみましょう。

まず相手を知り、理解しようとすること。相手はあなたに好感を持ってくれるはずです。その上で、相手に対して肯定メッセージを投げかけるようにしましょう。

「それはいいね」「よく分かりますよ」「面白いですね」「楽しそうですね」「きっと成功するよ」……。

その際、ちょっとしたコツがあります。マイナスの言葉を避けるために、「ダ行言葉」を使わないようにするのです。

「だって……」「だけど……」「だから……」「でも……」「どうせ……」といったダ行で始まる接続詞は否定的な言葉が後に続きます。

ダ行ではありませんが、「しかし」「それはそうだけど」「そうは言うけど」といった否定的な接続フレーズも同じです。これらの言葉を意識して使わないようにすれば、必然的に否定的な言葉が出なくなります。

「ありがとう」という感謝の言葉を使うのも効果的です。関西では「ありがとう」を比較的たくさん使います。関東では「すみません」が多いように感じます。意識して「ありがとう」「ありがとうございます」を使うように心がける。

相手に対して感謝する。感謝の気持ちを表すということは、コミュニケーションを円滑にするために大変有効です。

コミュニケーションが良くなれば当然、人間関係の質を高めることができます。

関係の質が高まればお互い信頼し合い、安心できる関係を築くことができる。必然的に、感情も安定した状態を保つことができるのです。

「YOUメッセージ」から「Iメッセージ」へ

会話の中では、時に相手に対してネガティブなことも、伝えなければならない場合があります。このとき不用意な言葉を使うと、関係は一気に険悪になってしまいます。逆に、言い回し1つで、上手に自分の気持ちを伝えることができます。

そこで役に立つのが「Iメッセージ」です。コミュニケーションが上手な人は「Iメッセージ」を多用します。逆に下手な人は「Youメッセージ」を使うことが多いのです。

たとえば、相手からキツい言葉を投げかけられたとき、「なんでそんなひどいことを言うのですか!」と相手を責めるのが「Youメッセージ」です。

責められたほうは「それはキミが約束を守らないからだ!」と、同じく「Youメッセージ」で返してくるでしょう。相手を主語にして相手のことを責めたり非難するのです。こうなるともはやケンカ腰で決定的な対立関係になってしまいます。

これを「Iメッセージ」に変えてみるとこうなります。

「そういうことを言われて、私はとても悲しく感じました」「私はとても傷つきました」……。主語を自分に変えて、自分がどう感じたか、どんな状況になったかを伝えるのです。

テーブルの上に置かれたひな形、封筒、ボールペン、コーヒー、ペンを持つ手
写真=iStock.com/c11yg
※写真はイメージです

相手を直接非難したり責めるのではなく、自分の気持ちを伝えることで相手に理解してもらうように促すのです。

「ちょっと私はショックを受けました」
「かなり落ち込みました」
「とても寂しい気持ちになりました」

……etc.

などと「Iメッセージ」で言われれば、相手も「そうか、自分の言動でこんなふうに感じさせてしまったのか……」と冷静に反省することができます。

「Youメッセージ」は無意識に、悪いのはあなたであり、あなたが変わるべきだと伝えているのです。

ただし、そう言われて素直に自分を変える人は少ないでしょう。むしろ反発し、頑なに拒絶反応を起こすのが関の山です。

それに対して「Iメッセージ」は、相手を変えようという意図は伝わりません。抵抗感なく、こちらの言葉を受け取ってもらうことができます。相手は素直に自分の行動を反省し、変わる可能性があるのです。