※本稿は、上阪徹『文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
会食の「お礼」メールは会食時から始まっている
あるプロジェクトが終わって、取引先から会食に誘われ、役員や上司、同僚などとともに伺ったあとに、「お礼」のメールを出すとしましょう。
送り先の「読み手」である上司、役員、取引先の担当者、同僚、違う部署の社員では、内容はすべて同じでいいでしょうか。違うでしょう。
役員には、こんなプロジェクトを任せてもらえたお礼がいいかもしれない。取引先の担当者には取引をさせてもらったお礼。上司にはサポートしてもらったお礼。同僚は一緒に頑張ってくれたお礼。違う部署の社員には陰ながら支えてもらったお礼かもしれない。
そして「お礼」のメールでは、1つ大きなポイントがあります。
それは、「お礼」メールを書くことがわかっているなら、「素材」集めは「お礼」の対象となるシーン、この場合なら食事のときから始まっているということです。
その場にいなければ得られなかった「素材」を使う
実際、会食に誘ってもらった取引先の担当者に「昨日は食事をありがとうございました」という当たり前の慣用句の御礼で、果たして感謝の気持ちは通じるか。
それこそ、誰にでも言えてしまう一言を書いたところで、思いは伝わらないでしょう。そこで、なんとかしようとデスクでウンウンうなってしまうことになる。書けない。
なので、こういうとき、ぜひ使ってほしいのが、拙著『文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)で紹介している「素材」の「メモ」なのです。
あらかじめ食事の「お礼」のメールを出すことがわかっているのであれば、食事の場から「素材」の準備は始まるのです。
「お礼」のメールに入れる内容を、アンテナを立てて探しておくのです。
たとえば、会食の最中に取引先の担当者が、若い頃に聞いたというとてもいい言葉を発したりする。また、プロジェクトのどんな場面が最もうれしいと感じたかを話したりする。なぜこの店にしたのか、どんなにこの店を気に入っているか伝えたとする……。
こうした、その場にいなければ決して得られなかった「素材」が「お礼」のメールに1つ入っているだけで、「読み手」の受け止め方はまるで変わるのです。
会食の「お礼」メール例
昨夜はありがとうございました。
お話されていた、◎◎さんの入社3年目のとき、上司からお聞きになったというエピソード、とても強く心に残りました。
「仕事は必ず誰かが感謝してくれている」
私も、この言葉を励みに、これからも頑張っていきたいと思います。