「事実」「数字」「エピソード」をただ置くだけ

どうでしょう。こんなフレーズがメールの中にちょっと入っているだけで、通り一遍の当たり前のメールにはならなくなるのです。書き手にしか書けない、気持ちのこもった「お礼」のメールになる。

しかも、文章のテクニックで書いているのではありません。「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」の「素材」をそのまま書いただけです。それだけで文章はまるで変わるのです。しかも、手間をかけずに。

そのために重要になるのは、会食のときから「お礼」のメールを意識して、「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」の「素材」を集めておくことです。そして、忘れてしまうので、必ず「メモ」を取る。

もちろん、食事中、あからさまにずっとメモを取っていては興ざめですから、「これはいい話を聞いたぞ」と思ったら、トイレに立ってササッとメモしておくのです。

「お礼」のメールなら、2、3の「素材」があれば充分でしょう。

たったそれだけで、翌日書く「お礼」のメールはまったく違うものになります。そして、あっという間に書けてしまうのです。

「出張レポート」にも応用できる

出張後のレポートも、あらかじめ書かなければいけないことがわかっている文章です。となれば、「素材」集めは出張時点から始まっています。

それをやらずに会社に戻り、デスクに座って「書けない」となるのは、1日の終わりの日報と同じ。しっかり「素材」をメモしておけばいいのです。それはそのまま、レポートの文章になっていきます。

そしてレポートに必要な「素材」は、「真の目的」と「読み手」によって変わっていきます。逆にいえば、「真の目的」と「読み手」を意識すれば、必要な「素材」に頭が向かうようになるのです。

たとえば、工場視察のレポートを例にしましょう。「真の目的」と「読み手」が変われば、必要な「素材」はこんなにも変わるのではないでしょうか。

「真の目的」と「読み手」が変われば、必要な「素材」は変わる――工場視察のレポート例

真の目的/工場の現状について部の同僚たちにレポートする
読み手/同僚
素材

・工場の概要(大きさ、生産高など)
・外観やエントランスなどの雰囲気
・強みと課題
・ラインで働いている人たちのコメント


真の目的/工場の改善点について上司にレポートする
読み手/上司
素材

・生産高やコストなど数字面の状況
・現場における課題
・課題の改善、現場の意見
・ライン長や管理者のコメント


真の目的/工場の建て替えについて役員にレポートする
読み手/役員
素材

・工場をクローズした場合の影響
・建て替えに際して必要な手続き
・これから改善すべき点
・工場長のコメント