うまい文章を書くには、どうすればいいのか。ブックライターの上阪徹さんは「『いい』『すごい』といった形容詞を使うと、文章がダメになる。「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」といった素材を使って書いてみてほしい」という――。

※本稿は、上阪徹『文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

形容詞が文章をダメにしていた

駆け出しの採用広告のコピーライターが、真っ先にやってしまうキャッチコピーがあります。

「当社は、いい会社です」

たしかに、いい会社なのかもしれませんが、これでは何も伝わりません。

読む人は、職を探している人たちですが、このキャッチフレーズで転職しようという人はまずいないでしょう。

まったく具体性がないし、説得力もないし、どの会社にも言えてしまう。

ところが、新米コピーライターは、言葉こそが意味を持つと思い込んで「いい会社」に変わる表現=形容詞を一生懸命になって探そうとしてしまうのです。

たとえば、

「当社は、素晴らしい会社です」
「当社は、すごい会社です」
「当社は、立派な会社です」

しかし、これでもまったく伝わらない。形容する言葉が変わったに過ぎません。

実は形容詞の危うさとは、形容することで、むしろ意外にも伝わらなくなってしまうことにあるのです。

形容詞では、なかなか真意が伝わらない。このことに気づいておく必要があります。

具体的な「事実」「数字」「エピソード」を探す

形容詞では、「いい会社」であることが、なかなか伝わらないわけですが、では、どうすればいいのか。

書き手が形容する言葉ではなく、具体的な「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」に目を向けるのです。

たとえば、「いい会社」のように、きれいな形容詞でまとめようとせず、こんな内容を置いてみたら、どうでしょう。

「社長が毎月、社員を順番に食事に連れていってくれる」
「この5年、退職者はひとりもいない」
「入社3カ月で課長に抜擢された社員がいる」
「10年間、売り上げも利益もずっと右肩上がり」
「この会社に転職して本当によかった、と転職者の誰もが言っている」

どうでしょう。このほうが、よほど会社の魅力を伝えられるのではないでしょうか。

そしてこれらの「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」こそ、実は「素材」そのものなのです。

ひねった形容詞を考えようとするよりも、「素材」をそのまま置いたほうが、よほど伝わる文章になる、ということです。