「みたい夢」をみるには、どうすればいいのか。夢を専門とする東洋大学の松田英子教授は「好きなアイドルの曲を流しながら眠りについた大学生は、実際にそのアイドルが夢に登場した。寝る前にみたい夢をひたすらイメージするという古典的な方法にも効果はある」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、松田英子『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

アイマスクをしてベッドで眠る女性
写真=iStock.com/fizkes
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ノンレム睡眠のときは「頭のお掃除」

進化の歴史上では先にノンレム睡眠(夢をみにくい)が現れ、あとでレム睡眠(夢をみやすい)が現れたそうです。レム睡眠は大脳の進化発達とともに出現したといえます。

ですから哺乳類にはレム睡眠が確認できるのです。ひと晩のなかでは、先にノンレム睡眠がきて、後でレム睡眠がくるという約90分のサイクルを何回か繰り返すことが確認されています。入眠から明け方にかけてこのユニットが繰り返されるほど、レム睡眠の割合が次第に長くなります。

ノンレム睡眠は、浅いまどろみのステージ1からスタートします(図表1)。そして、熟睡するステージ3、4まで進みます。なお、近年ではステージ4をステージ3と併せてとらえています。そしてノンレム睡眠のときには、余分なシナプス(情報伝達のための接触構造)を整理・修正し、頭のお掃除をしているのではないかと考えられています。

脳のアイドリング中に人は夢をみる

レム睡眠時は、体はぐったりしていますが、目はキョロキョロと動き、脳は起きているときと同様に活発に活動しています。このときに、実際に夢をみている間は自覚がありませんが、鮮明で奇想天外なストーリー性のある夢をみているのです。

睡眠は脳の休息がメインなので、睡眠の前半でしっかりノンレムのステージ3、4(深い眠り)をとります。ところが歳をとるとノンレムのステージ3、4が短くなり、これが熟眠感のなさをもたらします。レム睡眠の機能に関して、「レム睡眠中には次のような作業がおこなわれている」とされている仮説をまとめてみました(*1)

1.記憶の整理と弁別(脳のフォルダの整理)
こちらはノンレムのステージ3、4でもやっているという説もある

2.記憶情報の固定(長期記憶へ保存)と消去(脳の容量のデフラグ化)

3.記憶情報にまつわる感情の処理→辛い記憶を和らげる

レム睡眠のときには、脳はアイドリングをして、目覚めたあとの働きをよくするために準備しているようなイメージです。

*1 松田英子(2021).『はじめての明晰夢 夢をデザインする心理学』朝日出版社