※本稿は、犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
睡眠の質と寝返りには密接な関係がある
良質な睡眠に寝返りは欠かせません。一般的に成人は、7~8時間の睡眠中に、20~30回ほどは寝返りをすると言われています。
「ぐっすり深く眠る」と聞くと、ほとんど動かずに眠り続けることをイメージされるかもしれませんが、それは逆です。睡眠中、長い時間同じ姿勢のままでいると、筋肉や骨に負担がかかってしまいます。そこで、人間の身体は無意識のうちに体をひねりながら寝返りを打つことで、筋肉を動かし、体への負担を減らしているのです。寝返りには、血行やリンパの流れを促進したり、体温調整を助けたりする働きもあります。
ところが背中の筋肉が固くなってしまうと、寝返りが打ちづらくなります。背中や肩、腰などの筋肉が収縮して可動域が狭くなると、うまく体をひねることができないからです。寝返りは無意識の動きだからこそ、体の状態がダイレクトに反映されるのです。
「背中が固くなっている」と言っても、すぐにはイメージしづらいかもしれません。少しご説明しましょう。「背中が固い」というのは、具体的には、「体の後ろ側の筋肉=背中の筋肉」が、こり固まっている状態を指します。
多くの人は、日常生活で「体の前側」の筋肉ばかりを使っています。ものを掴む、パソコンやスマホの操作をする、料理をする、歩く……普段の生活では、残念ながら「体の後ろ側」の筋肉はほとんど動かせていないのです。動かせていないと、筋肉は固くなります。
なぜ子供は疲れを持ち越さないのか
日ごろは意識しない背中の筋肉ですが、人間の体の構造上、とても重要です。「広背筋」と呼ばれる背中の大きな筋肉の一つは、肩甲骨や上腕、骨盤などに付着しています。
この広背筋が固くなると、あらゆる不調を引き起こすと言っても過言ではありません。背中の周囲の筋肉が不自然に引っ張られるので、肩こりや巻き肩、腰痛、O脚などを誘発し、呼吸も浅くなります。筋肉が固くなると血流が滞り、リンパの流れも悪くなって、代謝も下がります。体はどんどん元気を失っていきます。