夢の内容がおかしくても気づかない理由
基本的には夢は意図的な処理ではないので筋書きはコントロールできません。夢の続きをみることも同様です。まれに、夢をみている途中に「これは夢だ」と気づく「明晰夢」では意図的、自覚的に夢をコントロールできます。
脳内の夢の伝達経路については、ホブソンが次のような提唱(*2)をしています。
「レム睡眠中は、脳幹の“橋”から発生するPGO波が視床の外側膝状体(視覚信号)を経由して後頭葉を刺激し、かつ内省的思考をする前頭前野は夜間に活動が弱くなるので、夢のおかしさには気づかない。前頭前野の論理的なチェックがないことが夢の独創性につながっている」
これはシナプスを柔らかくし、新しい経路ができるためではないかと推測されています。例外は「明晰夢」で前頭前野のBOLD信号が強まること。つまり想像世界でも内省、自制、意思決定ができるのだと説明しています。
*2 アラン・ホブソン(2003).『夢の科学 そのとき脳は何をしているのか?』講談社(ブルーバックス)
自分がみたい夢をみるにはどうすればいいか
明晰夢をみるための実験として代表的なものを挙げておきます。
フランクフルト大学(ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学)で2014年におこなわれた実験では、明晰夢をみる人の脳波に覚醒時より活発な30~40Hzのガンマ波が見られることから、被験者の前頭葉にガンマ波を当ててみたところ、半数以上の被験者が明晰夢をみたということです。
またノースウエスタン大学は2021年に、脳波の刺激をせず、明晰夢に導入し、夢をみながら外界のサインに応答したり簡単な計算問題に答えたりすることができたと発表しました。
NOVA PBS Officialによる実験映像も残っています。
好きな夢をみるには、寝る前にみたい夢のイメージをする――これを短い時間で習慣化するといいと思います。こうすることで覚醒時の自分にもポジティブな影響があり、さらにみたい夢をみられたらダブルでお得です。
寝る前に何かを思い出すことはみたい夢をみるために有用ですが、入眠直前に興奮しすぎると、楽しくても入眠を阻害するので気をつけましょう。