子どもがみやすい夢、大人がみやすい夢

みたい夢のイメージづくりには、人間性心理学を提唱したアブラハム・マズローが唱えた「ピーク・エクスペリエンス」(自分の人生の最高の瞬間をつかむ体験)を利用してはいかがでしょうか?

マズローは、どうすればその人が幸せに満たされ、十分に社会で機能する人間になるかを考え、人の欲求を階層化していきました(図表2参照)。「こうありたい」という欲求は、われわれが毎晩みる夢にも反映されます。

児童のときは食べ物(生理的欲求)や将来なりたい仕事等の“夢”(承認・尊重の欲求)が出てきていました。青年期は憧れの人とのデートの夢(愛と所属の欲求)が出てきます。トイレの夢(生理的な欲求)や、典型的な悪夢のテーマ、追われ逃げる、火事を消す夢(安全の欲求)などは、世代を通してみられます。

「ピーク・エクスペリエンス」の内容は人によって違いますが、美の創造による深い芸術的な体験、成熟した恋愛、完全なる性体験、親としての愛情、出産経験などが挙げられています。欲求階層構造の自己実現欲求から自己超越の欲求に近いですね。

これら「ピーク・エクスペリエンス」は、自分が何者でこれから何をしようとしているのかという洞察や、将来の困難を切り抜けるための勇気と自信を得ることに関して、長期にわたりポジティブな影響があると指摘されています(*3)。それを睡眠中の夢で体験できたら実にすばらしいことでしょう。

*3 ダル・ベン・シャハー(2015).『ハーバードの人生を変える授業』大和書房(だいわ文庫)

「空を飛ぶ夢」をイメージしたつもりが…

早稲田大学マスコミ研究会のみなさんが、好きな夢をみようとトライしました(*4)。実際におこなった寝る前のイメージトレーニング方法とその結果について紹介するとともに、ポイントを考えていきましょう。

〈Rさん――寝る前に心配事をいったん棚上げしよう〉

方法:ひたすら“みたい夢”について考え、「空を飛ぶ夢」をみるために延々と“空を飛びたい”と考えたりした。

結果:しかし、テストや単位が不安すぎて、そのことばかり考えていたら「単位を落とす夢」など悪い夢ばかりみた。結局、現時点ではみたい夢をみられていない。

*4 「夢」『ワセキチ』vol.40,34~41.早稲田マスコミ研究会