仕事上での“気づき”を得るための土台づくり

トレーナーの山下輝幸は、初めに知識をつけておくことが仕事の中での気づきを生み、その気づきがさらなる勉強意欲をわかせると言います。

「トヨタでは、作業分析といって、作業中の動作をビデオに撮って、どれだけムダな動きをしているかなどをメンバー本人に見せ、その悪いところを認識させる手法があります。

しかし、その手法を知らない人に、いきなり映像を“動かぬ証拠”のように示してしまうと、大問題になってしまうでしょう。業務を改善するどころの話ではありません。

そのためOJTソリューションズの指導先では、まず座学の講義を行い、何がムダとなり、仕事の“あるべき姿”とはどういうものなのかを学んでもらうところから始めます。

そういう前提が整った状態で、撮影したビデオをみんなで見て、作業の中にムダな動きがないかを意見交換していき、ある程度、その映像の内容が理解できたところで、それぞれの担当現場における改善点をピックアップしてもらい、改善につなげます。

座学で事前に知識を得ておくことで、本人が、あるべき姿と現状とのギャップを自覚できます。つまり、「ギャップ=改善すべきところ」だと気づきます。

気づきがあると、『この場合はどうなのか?』などと疑問がわいてくるものです。もっと教えてほしいと質問に来る人もいます。そうなれば、しめたものです。そこですかさず『いいところに気づきましたね!』と認めて、ほめるのです。仕事に対する興味の高まりとほめられたうれしさがあると、勉強意欲は向上するものです」

本音を話しにくい関係性でメンバーのやる気を引き出した方法

主体性の度合いは、メンバーからの発言の多さからも、推し量ることができます。

仕事への関心が低ければ、黙って最低限の仕事をこなして、毎日終業時間を待つだけです。しかし、やる気があれば、自ずと発言は増えます。

山下は、「目的と手段」をはっきりさせることが、メンバーからの発言を引き出すと言います。

「トヨタ時代、ブラジルにTPS(トヨタ生産方式)の指導に行きました。そこで待っていたのは“おびえ”と“拒絶”です。日本からトヨタのアドバイザーが来るというのは、向こうからしたら怖いわけです。怖いから、自分たちの悪いところは見せない。いつも虚勢を張り、工程の改善点などを指摘しても、言い訳ばかりで受け入れないのです」

そこで、山下は、「目的と手段」を念頭に、こう話したと言います。