メンバーの変化をすかさずキャッチ
挨拶や声かけは、職場の風通しを良くするだけではありません。トレーナーの阿世知は、メンバーが、今、何を考えているかをキャッチする機会でもあると言います。
「トヨタで工長だった時代、20人ほどのメンバーを管理監督する立場でしたが、各人に一日何度か声をかけるようにしていました。すると、返ってくる短い言葉だけで、メンバーの今日の様子がわかるようになりました。たとえば、『この仕事の進捗はどう?』と聞けば、その受け答えによって、順調な様子や、不安や不満を抱いている様子に気づけます。
また、頻繁に一対一で声をかけているからこそ、うまくいっていないことについて気軽に話してもらえるので、何かあったときに早めに手を打つこともできるのです」
リモート環境下でのコミュニケーションに苦戦
トレーナーの大嶋弘も、トヨタ時代は五感をフルに使ってメンバーに接していました。しかし、コロナ禍でリモートワークが導入され、この手法が取りづらくなったと言います。
「オンライン会議で顔を見ることはできますが、雰囲気は感じにくいです。通信時にわずかなタイムラグがあるので、会話の間からつかんできた空気感も、長年培ってきた勘がききづらい状態です」
このエピソードから得られるのは、「トヨタで長らくリーダー経験を積んできたトレーナーであっても、オンラインだけでコミュニケーションを円滑に行うことは難しい」ということです。日常会話が激減している中、オンライン会議中に、いきなり「何か問題はない?」「何か意見はある?」と聞かれても、メンバーは言い出しにくいでしょう。そうならないためにも、いきなりオンラインに移行しても問題がないように、これまで以上に普段から、挨拶や声かけを行い、スムーズにコミュニケーションが成立する環境づくりに取り組むべきなのです。
リモートワークが増えれば、上からの管理が減って、プレッシャーから解放されるメンバーもいるかもしれません。けれどもそれは、仕事のサポートや“めんどう見”も手薄になるということです。場合によっては、孤独を感じるメンバー、精神的に打撃を受けるメンバーもいるかもしれません。
リーダーとメンバーが接する機会が減っている今こそ、日頃からリーダーは挨拶と声かけを積極的に行って、メンバーの変化を察知する機会を自らつくり出していかなければなりません。