2022年春、北欧フィンランドで寿司職人として働き始めた日本人女性がいる。2014年からブログ「週末北欧部」を続け、このほど著書『北欧こじらせ日記 移住決定編』(世界文化社)を出したchikaさんは「海外移住するために日本で寿司職人養成学校に通いました。日本で新卒として寿司店に就職した人と比べると1.5倍の収入を得られています」という。ノンフィクションライターの神田憲行さんが聞いた――。(前編/全2回)

寿司職人としてフィンランドに移住した

週末北欧部chikaさんが初めてフィンランドランドを訪れたのは20歳のとき。一目惚れして「将来、絶対ここに住む」と決意したという。とはいうものの、フィンランドへの移住は簡単には進まない。もんもんとした思いを抱えたまま、10年以上フィンランドへの旅を継続していた。

しかしある日、フィンランドでの日本人向けの求人情報を眺めていて、「寿司職人」の求人が多いことに気付いた。「寿司職人になってフィンランドに転職しよう」。料理人として働いた経験はない。無謀とも思える挑戦だったが、働きながら寿司職人を育成する専門学校に通い、ついに2022年4月、彼女は首都ヘルシンキの日本料理店に転職することに成功した。13年越しの夢を実現させたのである。

実は今、世界的な寿司ブームを背景に「寿司職人」の求人が増えているという。しかも人手不足もあって日本国内での実務の経験が薄くても、給料は上がっているとか。週末北欧部chikaさんは「ゼロから寿司職人として海外転職」に成功した例であり、その体験談は貴重だ。

彼女はいま、ヘルシンキ市内でフィンランド人が経営する日本料理店で働いている。4人いる寿司部門のシェフの中では2番目のポジションだという。

週末北欧部chika
フィンランド好きをこじらせて、13年間毎年フィンランドに通う。会社勤めのかたわら、移住のために「ヘルシンキで求人が多いから」という理由で寿司職人の修業を積み、今春念願のヘルシンキの和食店で働くことに。主な著書に『北欧こじらせ日記』『北欧こじらせ日記移住決定編』『かもめニッキ』(講談社)など。TwitterInstagramブログ週末北欧部