収入は日本人職人の初任給の約1.5倍近くだが…

――収入はどうなんでしょうか。海外転職を考えている人でも、果たしてやっていけるのか不安になる人も多いと思います。

私がいまもらっているお給料は、日本で新卒として寿司店に就職した人と比べると1.5倍くらいだと思います。新人の寿司職人ではなく、日本の会社の営業職として働いていた時代と比べると給料はだいぶ下がってはいますが、もともと移住のために節約生活をしていたとこもあり、寿司職人になっても生活レベルが落ちたということはありませんでした。北欧は物価が高いと言われますが、ノルウェーと比べるとフィンランドはそこまで高い国ではないと思います。

住居に関していうと、ヘルシンキ市内のワンルームの相場は平均して月10万~15万円ほど。ルームシェアで大きめのアパートに暮らすスタイルも人気で、その場合は1人あたり5、6万円で暮らすこともできます。

またヘルシンキは電車通勤で30分というと「遠いね」といわれるぐらい、小さな街なんです。なので東京の通勤感覚で職場まで電車で30分から1時間ほどの場所に住めば、家賃は半分くらいになります。

自分の中の優先順位とのマッチングで選ぶ

――chikaさんは転職先のレストラン・店選びでなにを考えられましたか。

お店と自分が寿司職人としてやりたいことのマッチングはとても大切だなと思いました。私はフィンランドの食材や感性を取り入れたお寿司が握りたかったので、フィンランド人が経営しているレストランをまず探して、今のフュージョン系和食の店にたどりつきました。

一方で、本格的な和食を作りたい方にはフュージョン系のお店は合わないかもしれません。たとえば、今のお店で私が『THE寿司』というシンプルなメニューを提案すると「美しいけれどプレーンすぎる」「もっと味が欲しい」とリクエストされることもあります。現在働いているお店は、いかに新しい挑戦や提案を柔軟に受け入れていくかが重視されているように思います。

海外で働くことプラス自分にとって何が大事なのか、技術なのか、文化を学びたいのか、給料なのか、休みなのかによってお店が変わる。そこも考えないと、せっかく海外に来ても生き方がマッチングしないということもあり得ます。自分の中の優先順位を考えてお店を選ぶのは大切だと感じました。