電話などで相手の声が聞き取れなかったとき、どう応じればいいのか。マナー講師の諏内えみさんは「『もう一度おっしゃっていただけますか』は相手に同じ動作を求めることになる。『もう一度おうかがいしてもよろしいでしょうか?』と主語を入れ替えて応じたほうがいい」という――。(第2回)

※本稿は、諏内えみ『一生ものの「正しい敬語と上級の気遣い」 先生! ダメダメな私を2時間で仕事デキる風にしてください!』(KADOKAWA)を再編集したものです

耳に手を当てて聞く人
写真=iStock.com/Wenping Zheng
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誠意と丁寧さが伝わる謝罪の言葉

相手に対して失礼なことを口にしてしまい、「あっ!」と思ったもののすでに手遅れで、気まずい思いをしたことはありませんか? 悪気はなく、つい口がすべったというのが本当のところではないでしょうか。

「失礼いたしました」「申し訳ありませんでした」と言うのは当然ですが、その後で黙り込んでしまったら、二重に失礼な印象を与えてしまいます。

お詫びとともに相手にわかってもらいたいのは、「思ってもいないことを言ってしまって後悔している」「言い間違いだったので許してほしい」「不快感を与えてしまったことを反省している」ということ。ここでは、「意図せず失言してしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます」と言いましょう。

あくまでも本心ではなく不可抗力だったというニュアンスを、責任逃れに聞こえないように伝えるために、「意図せずして」「意に反して」「図らずも」「心ならず」などの言葉を用います。言ってしまったことは取り消せませんが、誠意と丁寧さは伝わるはずです。

クレーム対応で大事な2つのこと

ビジネスにおいてお詫びする場面は多々あります。前章は自己責任による失言の例でしたが、自己責任ではない(とは言い切れない場合も含む)例として、クレーム対応があります。

明らかに自社に非があるクレームの電話について、「失礼いたしました」「申し訳ありませんでした」だけで乗り切ることは困難です。「それしか言えないのか」と、相手はさらにヒートアップすることでしょう。

クレームの初期対応で必須なのは、“謝罪&共感”です。相手は、不利益をこうむった上に不快な思いをし、またクレームの電話をかけるという手間と時間をかけています。ですので、謝罪だけでなく、相手の思いに寄り添い共感することが必要なのです。

ここでは、「私どもに不行き届きがあり、大変申し訳ございませんでした。不快な思いをさせてしまいましたこと、お詫び申し上げます」と言いましょう。「ご不便、ご不自由をおかけした」「ご不安にさせた」など、状況に応じて使い分けることも大切です。

謝罪は、ビジネスのキモでもあります。謝罪の仕方によっては見限られることもありますし、逆に信頼されることもあります。プラスに転じる謝罪ができる人は、どんな仕事をしてもうまくいくことでしょう。