「地球上で最後の“世代”になるかもしれない」
「自由で民主的な社会での抗議活動は、平和裏に行われなければならない。人間や器物に対する暴力は違法である」として、全国規模の署名集めに立ち上がったのは、ドイツのノートライン=ヴェストファレン州のCDU(キリスト教民主同盟)の教会系の議員たちだった。人間や器物に対する暴力とは、具体的には、最近、ラスト・ジェネレーションというグループがしばしば行っている美術品の汚損、道路封鎖、さらには空港封鎖などを指す。
ラスト・ジェネレーションというのは、CO2の削減を要求する多くの環境グループのうち、いわば一番過激な人たちが集まる新組織だ。本格的な始動は今年の初め。彼らは、今が、地球が助かるか助からないかの境目で、これを逃すと、坂道を転がり落ちるように環境が破壊され、地球は人間が住めない惑星になると主張している。つまりグループの名前は、自分たちが地球上で最後のジェネレーションになるかもしれないという絶望から来ている。
ところが、世の中にはその緊急性をわかっていない愚鈍な人間が満ち溢れている。そこで、そんな人間たちを目覚めさせることが自分たちの任務であり、そのためには、自分たちは何をしても良いと思い込んでいるのが、ラスト・ジェネレーションらしい。
抗議活動は「トマトスープ事件」にとどまらず…
以来、彼らが抗議活動と称して一番頻繁に行っているのが、主にベルリンでの主要道路の封鎖。特殊な瞬間接着剤で手を道路に貼りつけるので、簡単には排除できない。当然のことながら、渋滞で多くの市民が甚大な迷惑を被るが、今のところすべて泣き寝入りの状態だ。
また、夏ごろからはそれに加え、ヨーロッパのあちこちの美術館で、著名な絵画にスープやトマトソースなどをぶちまけることが始まった。その暴挙の後、額縁にやはり瞬間接着剤で手を貼りつけてポーズをとっている2人組の若者の写真を、すでに読者諸氏も目にしていることと思う。これがニュースとして世界中に広がるのだから、注目を浴びるという意味ではまさに大成功だ。
また、美術品だけでなく、ベルリンでは各政党の本部の建物に大量のオレンジ色のペンキをぶっかけたり、また、国際空港に侵入し、滑走路に手を貼りつけて航空機の離着陸を妨害したり、行動はどんどんエスカレートしている。