2022年上半期(1月~6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。政治経済部門の第4位は――。(初公開日:2022年3月8日)

驚異の「年間10万円の値上げ」になる見込み

3月4日、ガソリンスタンドの前を通ったら、衝撃的な数字が目に飛び込んできた。レギュラーガソリンの値段が1.9ユーロを超えている! 同日のレートで換算すれば、1リットル240円を超えてしまったわけだ。ちなみに2020年のレギュラーガソリンの平均価格は1.29ユーロ、21年が1.58ユーロで、今年の1月は1.72ユーロになっていた。それがその後の1カ月でさらに急騰し、しかも、上昇はまだ止まりそうにない。

エルサレムで記者会見に臨むドイツのショルツ首相
写真=EPA/時事通信フォト
エルサレムで記者会見に臨むドイツのショルツ首相

エネルギー部門の高騰は石油だけではない。現在、ドイツの平均的な家庭のエネルギー代は、前年比でなんと5割も増えている。特に天然ガスの市場価格は、前年比でほぼ2倍。ドイツでは地域暖房に天然ガスを使っている自治体も多く、平均家庭のガス代の負担は、日本円にすると年間で約10万円の増加になるだろうという。

さらに石炭も需要の急増で、価格は現在、前年比でほぼ3倍に達し、それら石炭やガス価格の影響をもろに受けた電気代が暴騰中である。ドイツでは通常、多くの電力会社が1月から新料金に切り替えるが、今年の電気代はすでに平均6割も上がっている(特に新電力が、天井知らずの値上げになっている)。しかし、それでも間に合わず、例外的に4月に再値上げを計画している会社もあるという。

「極度のロシア依存」のツケがきている

ドイツではたいてい、電気代は前年の実績から弾き出された金額を12等分して毎月支払い、翌年に、実費との差額を一括精算するという方法をとっている。だから、現在支払い中の金額には進行中の電気代高騰がまだ正確には反映されておらず、すべての国民が値上げを実感しているとは限らない。

ただ、電気は贅沢品ではないので、個人での大幅な節約は難しく、もし、最終的にガスと同じ程度の値上げ幅になるとすれば、国民生活に深刻な影響を与えることは避けられない。なお、打撃を受けるのは産業界も同じで、それにより雇用が減ったりすれば、景気は急激に落ち込むだろう。

現在の常軌を逸したエネルギーの急騰は、いうまでもなく、ウクライナでの戦争によりロシアからの輸入がストップするかもしれないという市場の懸念を反映している。ドイツ経済輸出管理局などによると、2020年の統計では、ドイツの天然ガスの55.2%、石炭の48.5%、石油の33.9%がロシア産だ。

国の要であるエネルギーを、ここまで一国に依存するのは明らかな失政で、安全保障上の思考が一切働いていなかったと非難されても仕方がない。ロシアへのガス依存は30%を超えるべきではないということは、それこそ20年も前から言われていた。しかし、メルケル政権は16年間、その不文律を完璧に無視し、粛々と55%まで依存を増やしてしまった。ここまでくると、今さら慌ててもそう簡単に修正もできない。