体当たりの職探しで学んだこと
資格取得後、食のセレクトショップとして知られ、カフェ事業も手がけるディーン・アンド・デルーカの面接を受けたり、人気のパン屋さんでもパート勤務で働かせてもらいましたが、希望していた作る側ではなく、販売する側でしか関わることが認められませんでした。
野菜ソムリエの資格はあったとしても、私は作る側のプロ(職人)になるための修業をしていません。「1時間に100本のニンジンを均一な幅で素早く千切りにし、それを8時間続けられる持久力がある」といった、現場で求められている能力が、残念ながらないのです。
そのほか、地元の女性たちが資金を持ち寄って立ち上げた、無農薬の果物や野菜を使ったジャム作りの会社は、「空きがないので雇えない」という回答でした。介護施設での食事作りも、「管理栄養士の資格を持っていることが好ましい」と言われて断られました。
実際に職探しをし、体当たりをしていくと、いろいろな現実を知ることができました。食の世界には多様な仕事があること、現場で求められるスキルの内容、収入になる仕事・ならない仕事、そして業界のダークな部分なども。そうしたことも知らずに、机上の空論で「食に関わる仕事をしよう」としていたのですから、実に恥ずかしい話です。
「自分の強み」は周りの人に気づかせてもらった
「資格は役に立たない」と書きましたが、その一方で、野菜ソムリエの資格取得の過程で得たものもありました。一つは、同じものに興味・関心をもつ仲間、もう一つは「プレゼンテーションが自分の強みである」という発見です。
後者は、資格試験に野菜の魅力を伝えるプレゼンテーションがあり、同期から「上手だ」と褒められたのです。プレゼンは前職の業務の一つであり、自分の強みとは思いませんでした。回数を重ね鍛錬しているうちに、「あなたの武器」と呼ばれるものになっていたようです。
その後、野菜ソムリエの先輩の紹介で、市の食育講座に登壇する仕事をいただきました。野菜の魅力を自分なりの解釈でお伝えしたところたいへん好評で、大きな充実感を得たと同時に、これが野菜ソムリエとして報酬がいただけた最初の仕事になりました。さらに、その食育講座の参加者からの推薦で、ある上場企業でランチタイムに野菜セミナーをさせていただいたりもしました。
とはいえ、こうした依頼はコンスタントに舞い込むわけではありません。つくづく感じました。「やりたい」という熱意だけではダメで、「必要とされること」「できること」が重ならないと収入を得る仕事にはならないのだと。