いくら合理的でも「お世話になります」は省略しない

それは相手と会った時、直接、たずねておくのです。

「あなたは毎日、いつごろ、メールを読むのですか?」

たとえ、目上に当たる人でも、かまわないと思います。ただ、直接、会った時に聞いたほうがいいでしょう。それだけのために電話したり、メールを送りつけたりするのは感心しません。「お前はいつ、読むんだ?」みたいなニュアンスが伝わってしまうからです。すると、相手の心証を害する……。

トヨタの人たちに聞くと、メールの文章に特別の決まりはないということです。簡潔に書くようにしているとのことですが、冒頭のあいさつ文、例えば「いつもお世話になっております」といったものも書いている、とのこと。

「誰も読まないかもしれない文章ですけれど、省いたからといって、その代わりに得られる時間はわずか」だからだそうです。

メールのあいさつ文は何も考えずに自動的に書くものだと思ってください。手紙の冒頭に「謹啓」とか「拝啓」と書くのと一緒です。

「とりあえずCCを入れる」は作りすぎのムダ

TPS本部長の尾上恭吾さんは「私はメールに資料を大量に添付することはしません」とはっきり言います。

「大量の資料を添付する人がいます。送るほうはよかれと思うのでしょうけれど、大量だと読むだけで時間を費やしてしまいます。なかには資料を添付したうえで、キーポイント(見出しのこと=筆者注)だけを何行か書いてくる人がいるのですが、こちらのほうが親切だと思います。

また、メールにCCをたくさん入れる人がいます。これはトヨタ生産方式でいう『作りすぎのムダ』です。ほんとうに読んでほしい内容をほんとうに必要な人だけに送る。それがメール連絡の鉄則だと思います」

尾上さんは海外の生産現場からの報告書も読む立場だ。海外駐在が長いから英文メールを苦にする人ではないけれど、それでも親切な人は資料のほかにキーポイントだけを付けると言っています。

そして、キーポイントだけを付けた人の資料は「全部読んでしまう」そうです。

きっとキーポイントの書き方が上手なのでしょう。内容のすべてを抜粋したものではなく、メインディッシュに誘導する前菜のように魅力的なキーポイントを付けたのではないでしょうか。そういうメールを見習うといいと思います。