「自律神経を整える」ことなどできない
健康に気をつける必要はありません。健康情報を集める必要もありません。
健康情報と自称するものの大半は「免疫力」のようなでたらめですから、健康情報を集めれば集めるほどまちがいが増え、事実を知っても信じられなくなるだけです。
そういう状態から脱出するのは簡単ではないのですが、手がかりにするためにもうひとつ、わかりやすいでたらめの例を挙げておきます。
「自律神経」というのがそうです。
自律神経という言葉もてんでバラバラに使われています。
やはり強いていいかえれば「体調」というくらいの意味ですが、ただ「体調を整える」というとぼんやりして見えるので、「自律神経を整える」といってハッタリをきかせたつもりになっているのでしょう。
免疫力と同じように、自律神経も実在しないのでしょうか?
まあ、言葉遊びをすればなんでも「実在しない」といえます。
『なぜ世界は存在しないのか』とか『時間は存在しない』という題名の本が実在するくらいなので、マネして「自律神経は存在しない」といってもいいのですが、もっと日常的な意味では、自律神経は存在し、遺体の解剖をすると「これがそうだ」と指さすこともできます。
ただし、自律神経という名前で呼ぶことはあまりなく、もっと細かい部分ごとの名前で、交感神経幹とか迷走神経と呼ぶのがふつうです(この言いかたも正確ではないのですが、正確にしたくなるのは手間かけばばあの呪いです)。
実物を見れば、「神経を整えることなどできるはずがない」という実感が湧いてきます。
細かく枝分かれした神経が、文字どおりの電気回路になっているわけですが、こんな複雑な形の電気回路に外から何かの刺激を加えて、電気回路を「整える」ことなどできるでしょうか?