東京都渋谷区に「幻の電氣餅」と呼ばれる人気商品がある。和菓子店「あいと電氣餅店」の大福は完全予約制で、1週間分を月曜日に受け付けるが、ネットで予約を開始するとすぐに完売する状況が続いている。この店はどうやって始まったのか。なぜ「電氣餅」というのか。経営コンサルタントの岩崎剛幸さんがリポートする――。
今までに食べたことがない「とろける」感触
「このお餅、いま大人気でなかなか買えないらしい」
私があいと電氣餅店のことを知ったのは、今年4月、家人が購入してきたのが最初でした。
お餅、大福。いずれもシンプルな見た目。いわゆる「映え系」の商品ではありません。それなのに予約制ですぐに完売してしまうという。
そんな餅の繁盛店があったのか? と私は驚きました。しかしこのお餅と大福を食べてみて、その理由がよくわかりました。
今までに食べたことがないお餅の感触だったからです。餅を口に入れるとそのままとろけそうなほどやわらかい。大福のあんこは甘すぎず、適度な塩気もあって絶妙な味わい。シンプルな餅も、大福も、今まで食べたことがない感動的な味わいでした。予約即完売というのもわかる独特のおいしさです。
私は早速、この店に行ってみました。なんとなくこのあたりだろうと見当はついていたのですが、看板らしきものが出ていないため、店の前を一度は通り過ぎてしまいました。それほど目立たない店舗外観でした。
衝撃的においしい大福との出会い
「あいと電氣餅店」(東京都渋谷区)を経営する鈴木瞳さんに話を伺うと、「みなさん、ここにたどり着けなくて、よく電話がかかってくるんです」ということでした。
この店は、一人の女性が電気餅のおいしさに衝撃を受け、そこから修業をして、自ら、その餅文化を継承していくことを選び、スタートさせた正真正銘の餅の専門店でした。