70歳目前のプーチン氏は退陣するのか

ウクライナのゼレンスキー大統領は9月21日の国連総会ビデオ演説で、「ウクライナも、欧州も、世界も平和を求めているが、1人だけが戦争を望んでいる」と述べ、名指しを避けながらプーチン・ロシア大統領を非難した。

9月21日、ロシアのノヴゴロド工科大学で開かれた会議に出席するプーチン大統領
写真=EPA/時事通信フォト
9月21日、ロシアのノヴゴロド工科大学で開かれた会議に出席するプーチン大統領

プーチン大統領も同日、30万人規模の「部分的動員令」を発表し、徹底抗戦の構えを示した。現状では、戦闘は越年し、長期化の可能性が強い。

一方で、ロシアのエリート層は1年半後の2024年3月17日に行われる次回大統領選を意識し始めた。10月7日に70歳になる高齢のプーチン大統領が続投するのか、それとも後継者を指名して退陣するのか。「戦争を望む唯一の人物」の去就が「プーチンの戦争」を左右する。

右派勢力は国防相の「銃殺刑」を要求

ロシアは9月になると、社会に緊張感が高まる。9月1日に全国の学校で新学期が始まり、急に涼しくなって、国民は長い冬を意識する。

秋は「政治の季節」といわれ、今年も9月11日に統一地方選があった。ウクライナ軍が9月、反転攻勢に成功すると、左右両翼から政権非難が噴出した。

左のリベラル勢力では、モスクワやサンクトペテルブルクの地区議員30人以上が連名で大統領の弾劾や辞任を要求する声明を発表。著名歌手のアラ・プガチョワさんも「ウクライナ侵略戦争」だと非難した。

右の愛国勢力では、退役軍人や保守派団体がずさんな作戦・戦術を非難し、総動員令を要求。右派の急先鋒イーゴリ・ギルキン氏は侵攻作戦を失敗させたショイグ国防相を銃殺刑に処すよう要求した。

左右両翼の政治的主張の高まりは、「政治の季節」到来を意味し、次回大統領選をめぐる「暗闘」が浮上しつつある。

「ウクライナ戦争が後継争いを引き起こした」

政治評論家のアンドレイ・ペルツェフ・カーネギー国際平和財団研究員は、同財団のHPで、「ウクライナの戦争長期化で、エリートは自らの将来を考え、居場所を見いだす必要に迫られた。プーチンは退陣する気はなさそうだが、ますます過去に追いやられている。戦後の未来像にプーチンの居場所はない。彼の役割は、後継者を指名して舞台から去ることだけだ」と述べ、「ウクライナ戦争が公然たる後継争いを引き起こした」と指摘した。