同研究員は、「与党の官僚や幹部が脚光を浴びようと必死で、互いになじり合うなど、活発な選挙戦が始まった」とし、後継候補として、メドベージェフ安全保障会議副議長(57)、キリエンコ大統領府第1副長官(60)、ボロディン下院議長(58)、ソビャーニン・モスクワ市長(64)、ミシュスチン首相(56)らの名を挙げた。
メドベージェフ、ボロディン両氏は欧米を侮辱する発言を精力的に発信して存在感を強め、ウクライナ担当のキリエンコ氏はドンバス地方の併合を主導する政治力を誇示する。ソビャーニン、ミシュスチン両氏は逆に、ウクライナ侵攻から距離を置き、戦後の欧米との関係改善に備えているという。ただし、これらの人物は以前から後継候補に挙がっており、新味がない。
ダークホースのパトルシェフ農相とは何者か
後継者のダークホースとして、プロの専門家の間で注目されているのが、事実上の政権ナンバー2、パトルシェフ安保会議書記の長男、ドミトリー・パトルシェフ農相(44)だ。
経済学博士号を持つ銀行家出身で、農業銀行頭取時代、「バンカー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。連邦保安局(FSB)アカデミーでも学び、FSB中尉の称号を持つ。サラブレッドで、政権を支えるシロビキ(武闘派)とオリガルヒ(新興財閥)の双方から支持を得やすい。
政治評論家のイリヤ・ゲラシチェンコフ地域政策開発センター所長は、プーチン大統領は24年の大統領選には出馬しないと断言し、「メドベージェフ大統領・パトルシェフ(子)首相による新タンデム(二頭立て馬車)体制」になると予測した。
「SVR(対外情報庁)将軍」というハンドルネームでクレムリンの内情を投稿している正体不明の人物は7月末、ロシアのSNS「テレグラム」で、プーチン大統領が10月17日に内閣改造を断行し、ミシュスチン首相を更迭、パトルシェフ農相を起用すると予測した。首相は大統領が職務執行不能に陥った場合、大統領代行を務める重要ポストだ。