東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手は、今シーズン53本塁打(9月9日現在)を記録し、ホームラン王だけでなく、打率、打点の「三冠王」を期待されている。スポーツライターの広尾晃さんは「並外れた集中力が結果に繋がり、日本では敵なしの状態だ。もしメジャーに挑戦するのであれば、身体を『魔改造』する意識が必要になる」という――。
3回、50号の先制3ランを放ったヤクルトの村上宗隆=2022年9月2日、神宮球場
写真=時事通信フォト
3回、50号の先制3ランを放ったヤクルトの村上宗隆=2022年9月2日、神宮球場

破天荒としか表現できない今シーズンの成績

ヤクルトの村上宗隆は、空前の成績を残しつつある。9月6日、124試合目にして53本塁打を記録したが、このペースをキープすれば、2013年に元同僚のバレンティンがマークしたシーズン60本塁打のNPB記録に並ぶ。しかもここまで7人11例しかない「三冠王」の可能性もある。破天荒としか言いようがない。

2018年、台湾で行われたアジアウインターリーグで、ヤクルトの新人村上宗隆は、同期のロッテ安田尚憲と中軸を組み、大活躍した。筆者は台中で、現地の新聞記者から「村上は同期の清宮幸太郎(日本ハム)よりも凄いんじゃないか」と言われた。村上に注目し始めたのはこの時からだ。

前評判は早実・清宮の方が上だった

2017年のドラフトの目玉は早稲田実業の清宮幸太郎だった。7球団が1位指名、くじ引きで日本ハムが指名権を得た。清宮のくじに外れた6球団のうち、ヤクルト、巨人、楽天が九州学院の村上を指名、ヤクルトが引き当てた。つまり清宮の「外れ1位」だった。

当時の村上の評価は「強打の捕手」。高校通算52本塁打だが、1年の夏に甲子園に出場したものの4打数無安打でチームも敗退。この時点では、毎年何人かは出る「スラッガー候補」の一人であり、清宮との前評判の差は大きかった。また捕手としては「身体が大きく、足が長すぎる」との声もあり、入団後は内野コンバートがほぼ決まっていた。

1年目、清宮は19歳で7本塁打を記録「大物の片鱗見せる」と言われたが、村上は一軍はわずか6試合、1本塁打に終わる。しかし二軍では17本塁打(2位)、70打点(2位)、打率.288(3位)をマーク、順調に成長していた。