MLBで日本人打者が成功しないワケ

同時に、MLBへの挑戦も見てみたいところだ。

ただ、その道は非常に厳しい。ただ1人の例外を除いて、日本人打者はMLBに行けば「小型化」する。以下はMLBに挑戦した主要なNPBの強打者の長打率の変化。()内の数字は増減率。

イチロー NPB.522 →MLB.402(-23.0%)
新庄剛志 NPB.432 →MLB.370(-14.4%)
松井秀喜 NPB.583 →MLB.462(-20.8%)
城島健司 NPB.508 →MLB.411(-19.1%)
中村紀洋 NPB.469 →MLB.179(-61.8%)
青木宣親 NPB.456 →MLB.387(-15.1%)
福留孝介 NPB.487 →MLB.395(-18.9%)
秋山翔吾 NPB.454 →MLB.274(-39.6%)
筒香嘉智 NPB.528 →MLB.339(-35.8%)
鈴木誠也 NPB.570 →MLB.420(-26.3%)

長打率(SLG)は、0.500でオールスター級、0.450で中軸打者というところだが、イチローや松井秀喜のような強打者を含めNPBの各打者は軒並み数字を落としている。また、秋山以降の最近の打者の方が、下落率が大きいことがわかる。

ここ数年、MLBでは「フライボール革命」が起こり、打撃が革命的に変わっている。日本人選手はそんな流れについていけないのだ。

しかし、ただ一人、NPB時代より数字を上げている選手がいる。

大谷翔平 NPB.501 →MLB.537(+7.2%)

大谷翔平は激変するMLBに対応して数字を残しているのだ。その上、先発投手としてリーグ屈指の活躍なのだから言葉を失うが、とにかく大谷だけが「例外」なのだ。

大谷と日本人打者の決定的な違い

大谷翔平と他のNPBの強打者は何が違うのか?

2018年、MLBに移籍した当時と、最近の大谷は身体の大きさが全く違う。大谷はMLB投手の100マイルの剛速球に対応するため、パワーアップに励み、小山のような上体を作った。

さらに大谷は毎年オフにシアトル近郊にある「ドライブライン・ベースボール」というジムに通い、動作解析などのデータをもとに自分の投球を「デザイン」している。打者としても主戦級の投球も調べ上げ、それに対応できるスイングも創り上げている。

MLBのトップクラスの選手の多くは、こういう形で自らの「投打」を創造しているのだ。

重要なことは、大谷はこうした「魔改造」を、自分の意志で行っているということ。誰かの言うことを聞くのではなく、自分で問題意識をもって、身体や技術を進化させている。もちろんその過程で専門家の意見には耳を傾けるだろうが、最終的には自分の意志なのだ。