日本人記録の184三振

そして2019年、村上はブレークする。開幕から6番三塁でスタメン出場し、36本塁打96打点と10代、高卒プロ入り2年目のNPB記録を更新した。

それ以上にすごいのは184もの三振を喫したこと。NPBのシーズン三振記録は1993年の近鉄ブライアントの204だが、村上の184三振は日本人では史上最多。山のように三振を積み上げても臆することなく、平然とバットを振り続ける村上の肝の太さに感嘆した。この年、新人王。

翌2020年、村上はさらに進化を見せる。コロナ禍で試合数が減ったこともあり本塁打は28本に減ったが、打率は前年の.231(30位)から.307(5位)と大幅上昇。三振数は115に減少した。

さらに2021年村上は39本で巨人の岡本和真と本塁打王を分け合い、リーグ2位の112打点。チームはリーグ優勝、日本一にもなり村上は最年少(21歳)でリーグMVPに輝く。

世間は「久々に表れた日本人スラッガーだ、ライバルの岡本和真と時代をつくるだろう」と誉めそやしたが、何の何の、今季は、岡本を遥かに突き放し、異次元の数字を叩きだしているのだ。

村上の真骨頂は試合中の集中力

筆者は村上の試合を数多く見てきたが、感心するのはその「集中力」だ。

サードを守る村上は1球ごとに守備位置を変え、内野に指示を与え、マウンドの投手を激励する。ヤクルトのレギュラー陣では22歳の村上は20歳の遊撃手長岡秀樹に次ぐ若輩のはずだが42歳の石川雅規にも臆することなく声をかける。

相手ベンチに近い三塁手だけに、敵の変化をいち早く察知して声を上げる。昨年などは阪神の矢野燿大監督やコーチから「ゴチャゴチャ言うなや!」と怒鳴られたが、平然としていた。

また、打席ではどっしりと構えて、微妙なボールも悠々と見送る。今季の村上はリーグ4位の105三振。三振はホームランのコストなだけに依然として多いが、四球数はほぼ同数の102、ダントツのリーグ1位だ。敬遠数もリーグ1位の19と多いが、同時にボール球にはめったに手を出さない選球眼があるのだ。

さらに言えば、盗塁も12。50本塁打で二桁盗塁は、1950年の松竹、小鶴誠(51本塁打28盗塁)以来、史上2人目。つまり村上は、守備に就いても、打席に立っても、塁上にいても、一切集中力を切らさず、試合に入り込んでいるのだ。

このあたりも、常にのんびりした表情の清宮幸太郎とは対照的だ。

「中学時代から注目を集めてきた清宮選手は、アドバイスする人がたくさんいたから、それに合わせて体を動かしている感じだね、でも村上選手は自分から情報を取りに行って、自分で考えて動いている。その差が出始めたんじゃないか?」

ある大学野球指導者の見解だ。