イギリスの王室はどのように警護されているのか。ロンドン在住ジャーナリストの木村正人さんは「イギリス王室は国民との距離感を大切にしているため、『見せる警護』を最低限にしている。そのため、ジェームズ・ボンド型の腕時計などさまざまなテクノロジーを使って警護を工夫している」という――。
秘密のエージェントは、夕暮れ時に手にサイレンサーでピストルを保持しています
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王族、皇族を狙った事件が頻発

安倍晋三元首相が街頭演説中に射殺された事件で要人警護のあり方が見直されている。週刊新潮によると、米ニューヨークでは小室圭さんと、小室さんとの結婚を機に皇室を離れた眞子さんの警備を地元民間会社に委託する案も浮上しているという。英国ではメーガン夫人とともに2020年に王室を離脱したヘンリー公爵(王位継承順位6位)が「以前と異なる警護は不当」と裁判中だ。日本の皇族や英王室の警護はどうなっているのか。

9月6日に静養先の英スコットランド・バルモラル城で交代する首相ボリス・ジョンソン、リズ・トラス両氏に引見したばかりのエリザベス女王(96)の体調が8日急変し、同日午後6時半(日本時間9日午前2時半)、ご逝去が発表された。王位継承順位1位のチャールズ皇太子が国王に即位し、カミラ夫人が王妃となる。

エリザベス女王からチャールズ皇太子への王位継承作戦「ロンドン橋」は「ロンドン橋が落ちた」という暗号が首相に伝えられることで開始される。 かつて7つの海を支配した大英帝国の象徴だった英王室に憎しみが向けられることは今でも少なくない。

 昨年のクリスマス、エリザベス女王が滞在していたウィンザー城で、マスクをしてクロスボウを持ち、警備員に「女王を殺しに来た」と話す男が反逆罪で逮捕、起訴される事件があった。男は数カ月かけ「王室テロ」を計画していたとされる。

日本では2019年に、皇位継承順位2位の秋篠宮家の長男、悠仁ひさひとさまの通われるお茶の水女子大付属中学校(東京都文京区)で悠仁さまの机の上に刃物2本が置かれる事件が起きている。建造物侵入容疑で逮捕された男は「刺すつもりだった」と供述し、皇族警護の難しさを改めて浮き彫りにした。

皇籍を離脱し海外で暮らす小室眞子さんの警備は難しい

毎日新聞によると、05年に結婚して皇籍を離脱、民間人になった上皇ご夫妻の長女、黒田清子さんは警察庁から「個人警戒対象者」に指定され、警護が続けられたという。だが眞子さんの場合、日本の警察権が及ばない海外で暮らしているため、日本の警察官が身辺警護を実施するのは難しい。日本の警察官が警護で誰かに危害を加えた場合、訴訟や刑事告発に発展する恐れがあるからだ。