24時間態勢のSPの年収は1600万円以上
実際に王族を警護するのはどのような人物なのか。
ロンドン警視庁には「ロイヤリティ・プロテクション・グループ」という王室警護専門の部署が置かれている。また、王室警護班には英陸軍特殊部隊(SAS)で訓練を受けた185人が所属している。SP(警護官)は私服で行動し、常に自動拳銃グロック17(口径9ミリメートル)で武装、無線機、救急用具を肌身離さず持っている。
24時間態勢のSPの年収は高く、年10万ポンド(約1620万円)を超えるケースもある。王室SPのための航空券予算は年間460万ポンド(約7億4600万円)に達し、ホテル滞在費は200万ポンド(約3億2400万円)もかかる。
反君主制団体リパブリックの試算によると、納税者は王室の警備に年間1億600万ポンド(約172億円)を負担している。王室を維持するための年間費用の30%超だ。ちなみに日本の皇宮警察予算はその半分程度だ。
「財政難」のイギリス王室は警護対象が絞られている
英王室は第一次世界大戦で財政が逼迫したため、「現役王族」の枠を制限した経緯がある。ウィリアム王子の子供には王子や王女の称号が与えられているが、ヘンリー公爵の子供にはチャールズ皇太子が即位するまで王子や王女の称号は与えられない。
英王室が生き延びるには無駄を切り詰め、英国や英連邦王国国民の理解を得る必要があるからだ。そうでないと、フランスの国王ルイ16世のようにギロチンのかけられてしまうという危機感が英王室にはある。
このため、身辺警護の対象も絞り込まれている。1年を通じ24時間身辺警護がついているのはエリザベス女王、チャールズ皇太子、カミラ夫人、ウィリアム王子、キャサリン妃。公務の際に身辺警護がつくのはアン王女、エドワード王子、ソフィー夫人に限られている。