新興国の台頭、ユーロ危機、日本経済の弱体化。世界情勢が混迷の度を深めるなか、ゆるぎない視座を求めて、大前研一の門を叩くビジネスマンが増えている。ここに紹介するのは、大前が主宰する“私塾”で学んだ経営者たちの物語だ。
インターネットセキュリティーの最先端をゆくIT企業シマンテック。2010年5月から日本法人社長を務める河村浩明(55歳)には、いまも信頼を寄せる“師匠”がいる。経営コンサルタントの大前研一である。
05年10月から1年間、大前の主宰するEラーニングの「大前経営塾」(第8期)をみっちり受講し、修了後の現在もなお、週1回2時間の衛星テレビ番組「大前研一ライブ」の視聴を続けている。
「大前さんはなんといっても白黒をはっきりつけて直言する人であり、強い反骨心の持ち主です。僕は昔から大前さんの著作に馴染んできましたが、そこがいちばんの魅力だと思っています」
むろん、それだけではない。大前が発信する幅広い知見にもとづく現状分析や、骨太で斬新な将来構想には触発されることが多いという。
「社内にメッセージを発するときも、単にアメリカ本社の方針を伝えるだけではなく、大前さん流の『ものの見方』を織り交ぜることが少なくありません。そうすると説得力がぐんと増すのです。また、部下からプレゼンを受けたときに、結論がはっきりしないと『“天気予報”はいらない。どうすべきかを的確に述べろ』と指導することがありますが、これなども大前流だろうと思います(笑)」