華やかな外資系とは異なり、地道な国内営業で汗を流しているのがKAWARYO PGM社長の飯田紀行(42歳)だ。
静岡県浜松市で生まれ、浜松商業高校を出てからいったんは調理師になったが、25歳のときに地元の非鉄金属商社・川良商店に入社した。以来、貴金属部門の営業一筋で、09年には部門ごと独立を許されて現在の会社を創業した。
「独立初年度の売上高は3億円でしたが、11年度には10億円を見込んでいます。といっても、いまはメーンの商品である金の相場が上がっているから売り上げが膨らんでみえるだけです。取り扱う量でいったら倍くらいですね」
飯田はあくまでも謙虚である。こう続けた。
「もちろん社業が拡大していくのはいいことです。ただ、それには人間の成長という裏づけがなければいけないと思います。売り上げだけに目がいき、お客様をなおざりにしてはいけないのです。僕は板前をやっていましたが、そのころから『まず、お客様ありき』ということを考えているんです」
だから14人規模の会社ながら、飯田は社員教育に力を注ぐ。商工会議所の勉強会に部下とともに自ら出席するなどの努力を重ねているが、「そういう場で知識のインプットができても、なかなか身につかない」という悩みがあった。
表面的な知識だけではなく、価値観まで植えつけてくれる学びの場はないものか。ぴんときたのが大前経営塾だった。
まずは飯田自身が、ポケットマネーをはたいて11年4月に入塾した(第19期)。その結果は?
「おもしろくて、ためになります。50万円の価値は十分にありますよ(笑)」
たとえばエアキャンパスや、年5回ほど設定されているセミナーで出会う塾生たちとの議論である。
「大手企業の管理職の方と話をすると、自分とは見方がずいぶん違うことに新鮮な驚きを感じます。僕らはいまのアルミ地金の需要状況から、日本企業の先行きは暗いんじゃないかと考えがちです。でも製造業の内部にいる方は、これからの新技術や新市場を見通しているので、日本の未来を信じている。とても刺激を受けています」
自分の経験をもとに、飯田は12年以降、会社派遣の形で社員を順次、大前経営塾に送り込む計画を立てている。まずは30代の2人に白羽の矢を立てた。
「僕よりもできる人を採用して、さらに能力を磨いてもらいたいと思っています。大前経営塾の講義映像でリクルート創業者の江副浩正さんの話を聞きましたが、あのリクルートのように、できる社員には独立してもらって構わないと思っています」
飯田自身、川良商店から独立させてもらった恩義を人一倍感じている。社員教育は、社会への恩返しのつもりである。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時