企業はもちろん病院・研究所などのリーダーが自らを高めるため参集する。そんな“私塾”が存在する。インターネットでの遠隔授業を基本とする大前経営塾だ。エリートたちはなぜ、忙しい仕事の合間を縫って分厚いテキストを開き、ビデオによる講義を受けるのか。3人の塾生を訪ねて本音を聞いた。
経営共創基盤(IGPI)マネジャーの坂田幸樹(31歳)は、経営コンサルタントの大前研一が主宰する「大前経営塾」の塾生である。外資系コンサルティング会社から経営支援会社のリヴァンプへ移り、リヴァンプの支援先企業の社長を経て、2012年になってIGPIへ移籍したばかりだ。
支援先との契約が満了し、社長を退任するときになって、はたと考え込んだという。
「その時点では、中堅企業の海外要員になるとか別のベンチャー企業の幹部になるという選択肢もありました。どうしようかと迷っていたときに、一緒に経営に当たっていた“戦友”のような仲間がアドバイスをくれました。自分が誰を尊敬しているかを考えてみろ、というのです」
坂田の“戦友”がまっさきに名前を挙げたのは、発明王エジソンだった。
「私の場合は、大前研一さんや元産業再生機構COOの冨山和彦さん、リヴァンプの澤田貴司さん、カルロス・ゴーンさん、ルイス・ガースナーさんといった、大企業の再生とか改革に携わってきた人の名前が心の中に浮かんできました。0から1をつくるというよりは、1を10に伸ばしていく。あるいは不振に陥っていた企業を立て直していく。そのほうが向いていると感じたのです」
その冨山が創設し、代表を務めるのがIGPIである。尊敬する経営者のもとで、大企業の改革や再生に取り組む。これが坂田の「やりたいこと」だった。
坂田によれば、業績不振企業の再建から成長企業の新規事業の立ち上げまで、さまざまな局面において「ハンズオンで(経営に深く関与しつつ)経営支援をしていく」のがIGPIのスタイルだ。
「IGPIには、戦略コンサルタントのほか社長経験者、公認会計士、ファイナンシャルアドバイザーといったプロフェッショナルが集まっています。大前さんの言葉を借りると『4つの経済空間』というのですが、支援先のいろいろな角度からのニーズに対して幅の広い支援をすることができます。そこが同業他社との違いだと思います」