理路整然と語る坂田には、厳しい経済環境のなか、自力でキャリアを築いてきた者の自信と落ち着きが感じられる。そんな若き実力者が、さらに力をつけるための修練の場として選んだのが大前経営塾だった。理由は何か。

「私は大学時代から大前さんの著作に親しんできましたが、社会人としてコンサルティングの道に進んでからは、もう少し深く大前さんから学びたいと感じていました。これが理由の一つです。もう一つは、経営支援をしていくプロフェッショナルとして、壁に突き当たっていると感じていたことです。社長やプロジェクトマネジャーとして現場へ入ったときに、現場を見て問題解決することはできるのですが、それだけではいけないと思うようになりました。ある先輩経営者の言葉がきっかけです」

先輩経営者は、こう述べたという。

「オペレーショナルな経営者としては合格だ。しかし、経営者とは本来そういうものではない。現場で実行力を発揮するとともに、将来を見据えたうえで、3年後、5年後に会社がどうなっていくべきかを考えていかなくてはならないよ」

つまり「一緒になって現場を見るけれども、同時に将来のことも語っていかなければいけない」というアドバイスだ。

「経営のプロフェッショナルを目指したい」と語る坂田は、両方の能力をあわせて磨き上げなくてはならない。そのお手本となるのが大前なのだ。

「大前さんは『将来』を見せてくれます。たとえばグーグルという会社はすばらしい。では、5年後はどうなのか。現在のグーグルを語ることができる人はいくらでもいますが、5年後の姿を描ける人はそうはいません。グーグルに限らず、いまある情報から将来像を描くことができるのが大前さんです」

大前経営塾は春・秋の年2回開講制で、坂田は2010年10月から11年9月までの18期生だ。「経営のプロフェッショナル」を目指すため、大前門下での修業が続く。
(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐美雅浩=撮影)