昨年8月、アメリカ軍はアフガニスタンから撤退した。「テロとの戦い」はなぜ20年間も続いたのか。ワシントン・ポスト紙のクレイグ・ウィットロック記者は「米国史上最も長い戦争になるとは誰も予想していなかった。戦況が悪化していることを悟られまいと、国は国民にウソをつき続けた」という――。
※本稿は、クレイグ・ウィットロック『アフガニスタン・ペーパーズ』(岩波書店)の一部を再編集したものです。
アメリカの悲劇に全世界の支持が集まった
〔9.11から〕12日後の2001年10月7日、米軍がアフガニスタンに対して空爆を開始したとき、それがアメリカ史上最も長引く戦争になるとは――第1次世界大戦、第2次世界大戦、ベトナム戦争を合わせたよりも長くなるとは――誰も予想していなかった。
ベトナム戦争あるいは2003年にイラクで勃発することになる戦争とは異なり、アフガニスタンに対して軍事行動をとるという決定は、ほぼ一致した国民の支持に基づいていた。
アル=カーイダによる壊滅的なテロ攻撃に動揺し、激怒したアメリカ国民は、指導者たちが日本による真珠湾攻撃後と同様の決意で祖国を守ることを期待していた。
9.11同時多発テロの発生から3日もたたないうちに、米国議会は、ブッシュ政権がアル=カーイダとそのネットワークをかくまうすべての国に対して戦争に踏みきることを許可する法律を可決した。
北大西洋条約機構(NATO)は初めて「第5条」を発動した。攻撃を受けている加盟国を守るためのNATOの共同誓約である。国連安全保障理事会は「恐ろしいテロ攻撃」を全会一致で非難し、すべての国に加害者を裁判にかけるよう求めた。
敵対勢力までもがアメリカとの連帯を表明した。イランでは、数千人がろうそくを灯しての寝ずの祈りに参加し、強硬派は22年ぶりに、毎週の祈りの中で「アメリカに死を」と叫ぶのをやめた。