「ターリバーンの能力は低下している」はウソだった

当初、ワシントンの多くの高官たちは、ターリバーンが深刻な危機をもたらす可能性があるとは信じがたいと感じていた。現場の一部の軍指導者でさえ、ターリバーンを過小評価し、地方の小地域を支配しているかもしれないが、カーブルの政府には脅威を与えないと考えた。

「ターリバーンの能力は大幅に低下しているとわれわれは思っていた」と2004年から2005年までアメリカ軍特別部隊の副司令官を務めたバーナード・シャンプー准将は、陸軍の口述歴史インタビューで語った。

2005年にヘルマンド州で勤務した特殊部隊の大尉、ポール・トゥーランは、多くの米国当局者が戦争を平和維持と復興の任務だと誤解していた、と述べた。トゥーランは、戦闘が激化し、ターリバーンがその火力を強化していることを、耳を傾けてくれる人なら誰にでも説明しようとした。「われわれが正しく対処しなければ、やつらに長年ここで苦しめられつづけることになるだろう」とトゥーランは警告した。

「もう1つの9.11が起きる」警告は無視された

しかし、ブッシュ政権は内部からの警告を抑えこみ、公の場で戦争を美化した。2005年12月のCNNのトークショーにおける司会者ラリー・キングとのインタビューで、ラムズフェルドは、万事うまくいっているので、国防総省はまもなく2千人から3千人のアメリカ軍部隊を帰還させる、と述べた。それはアフガニスタンに駐留する部隊の約10パーセントに相当した。

「あの国で達成されている進歩の直接の結果だ」とラムズフェルドは宣言した。

しかし、2カ月後、ラムズフェルドのオフィスおよびワシントンの他の高官たちは、駐カーブル大使から別の機密の警告を受けとった。2006年2月21日の悲観的な電報の中で、〔カーブル大使の〕ニューマンは、「今後数カ月で暴力が増加するだろう」と予測し、カーブルやその他の主要都市でさらに自爆テロが発生するだろうと述べた。

ニューマンはパキスタンのターリバーンの聖域を非難し、次のように警告した。もしもこれを対処しないままにしておくと、「4年以上前の介入へと……われわれを促したのと同じ戦略的脅威がアメリカにふたたび出現する可能性がある」――言い換えれば、もう一つの9.11だ。