今、企業が喉から手が出るほどほしいのが「DX人材」。ネックは、選ぶ側がDXにあまり詳しくない素人が多いということだ。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「各社によってDX人材の定義や要件が異なり、どんな学生が適しているか見極めるのが難しく、暗中模索の状態だ」という――。
未来の携帯電話を使用する実業家
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どの業種でもDX人材は引っ張りだこだが……

中途採用市場が活況を呈している。中でもデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を担う人材の獲得競争が業種を超えて激しくなっている。

背景にあるのは、コロナ禍でデジタル化がさらに加速したこと。既存のビジネスの盛衰やビジネスモデルが劇的に変化し、業種を問わずデジタル化を推進し、新たな競争に打ち勝とうとの思いがある。

例えば、ニトリホールディングスは、IT部門の人員を2032年までに現状の約3倍となる1000人に増やす計画だ。消費のデジタル化が進む中、IT人材の拡充を通じて自社のシステム開発を内製化し、競争力を高める狙いがある。

イオングループも2022年度中途採用計画は前年を400人上回る約2900人に増やす。同社は次世代型ネットスーパーの構築や来店客データを活用したシステム開発に取り組んでおり、デジタル分野などの専門人材など多様な経験を持つ人材の獲得を目指している。

ただし、デジタル人材はどこでも引っ張りだこだが、労働市場に多くないというミスマッチの問題を抱えている。

またデジタル人材はほしいが、IT系企業やメーカー、ニトリなどのように大量に採用するわけでもない企業も多い。そうした企業は、「デジタル人材を雇っても本当に活用できるのか」という問題も抱えている。