“DX人材の卵”を新卒者から探そうという動き

松尾教授は「今後20年で、確実にニーズが高まる職種として、DX人材、あるいはAI人材が挙げられる」と言っている。

しかし、この3つを兼ね備えた人材がどれぐらいいるのか、いるとしても採用する側が見極めるのはかなり困難だろう。自ずと目に見えやすい「デジタルスキル」に限定されるだろうが、そのレベル感を見極める専門家が社内にいないと採用は難しい。

顔の見えないビジネスマン
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そこで今始まっているのが“DX人材の卵”を新卒者から探そうという動きだ。中途採用で希少なDX人材が見つからないのであれば、松尾教授が言うように今後必要になるDX人材の卵を見つけて自社で育てていこうというものだ。

日本経済新聞社が株式の時価総額の上位100社と主な子会社を対象に調査したところ、23年卒の学生からデータ分析やAIなどの専門人材を別枠で採用する企業が3割(29社)もあったという(「日本経済新聞」22年6月28日)。

自動車など大手メーカーやIT関連、通信業以外に製薬、金融など多岐にわたっている。入社後は基幹システムの構築やDX戦略の立案を担うという。

別枠で採用するということは通常の新卒の選考ルートではないということだ。一部上場企業の建設関連会社の人事部長は別枠での採用に踏み切った理由についてこう語る。

「大学・大学院でDXに関するスキルを学んできた新卒を育てるには時間はかかるが、中途採用と違い、新卒であれば当社に合った人材を育成できるのではないかと考えた。といっても他のメーカーさんと違い、多く採用するわけでもない」