ロシアが「朝鮮半島化」を拒否するのは「韓国に米軍基地があるから」

スースロフ】朝鮮戦争ヴァージョンについては、アメリカにとって魅力的かもしれないが、ロシアが受け入れることはできない。

サイムズ】朝鮮停戦協定のような形態では受け入れられない。

スースロフ】その理由は、北朝鮮が孤立しているからだけではない。韓国はアメリカの同盟国で、そこには米軍基地がある。しかも大量の兵員がいる。日本よりほんのわずかに少ないだけだ。

サイムズ】ロシアには平和条約による解決が必要ということか。

スースロフ】その通りだ。ロシアにとって、朝鮮半島の38度線のような、ウクライナを貫通する分界線を定めるだけでは不十分だ。ロシアにとっては、最終的な正常化、当然のことながら、ウクライナの中立的地位、同国の軍事力の制限、同国と西側の軍事協力、軍事技術協力の制限が必要だ。

「ウクライナを朝鮮半島化したい」と考えるアメリカに対して、ロシアは受け入れがたいと言っている。ではアメリカはどうやってのませる気なのか。

嫌がるロシアを「ワシントンに引っ張り出す」シナリオとは

6月16日に放映された「グレート・ゲーム」で言及がありました。同番組に出演したのは、ドミトリー・スースロフ氏(ロシア高等経済大学教授)、アンドリャニク・ミグラニャン氏(モスクワ国際関係大学教授)、ニコライ・スタリコフ氏(作家)、アレクサンドル・ローセフ氏(外交・国防政策評議会幹部会員)の4人です。スタリコフ氏は著名な政治評論家でもあり、公共団体「ロシア市民連合」の創設者でもあります。

スタリコフ】アメリカの戦略について述べるならば、アメリカ人にとって何が勝利かということが重要だ。ロシア人にとっての勝利は単純だ。ウクライナの非ナチス化と非軍事化だ。ロシアの指導者は、賢明なことであるが、目標を達成したら紛争に終止符を打つと述べた。ロシアは戦線を拡大しない。

アメリカ人にとっての勝利とは何だろうか。アメリカは、ウクライナが勝利することはできないし、勝利してはならないと考えている。その理由はウクライナにロシアに対して勝利する潜在力が欠如しているということだけではない。ウクライナに勝たせないということが米国の戦略だ。

ウクライナは米国にとってロシアに対抗する道具だからである。ロシアを倒すのではなく、弱体化させるのが米国の戦略だ。だから紛争が継続する規模の武器をウクライナに供給する。ロシアは弱体化する。しかし、いかなる状況においてもウクライナが勝利を収めてはならない。ロシアが西側を必要としているからだ。経済的にロシアは苦しい状況に置かれる。暗いトンネルの先に光が見える。そして、ウクライナ政府やゼレンスキー大統領と折衝するのではなく、ワシントンに赴いて、全ての問題を解決して合意を達成するということになる。米国はロシアにさまざまな問題を作り出して、簡単な解決のシナリオを準備する。ワシントンがすべての問題を一挙に解決する。これが米国にとっての勝利ということだと思う。

「外交による紛争の終結」を口にしながら、ウクライナに武器を送り続けるアメリカの腹の内をよく推測しています。そして一貫してロシアが要求しているのは「ウクライナの中立化・非軍事化」ということもわかります。

西側とロシア双方の報道、特にホワイトハウスやクレムリンと精通している人物の発言に注目することで、両者の戦略を読み解くことができます。

(構成=石井謙一郎)
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