トランプ支持者から攻撃される…国内の世論も気になるバイデン

スースロフ】戦争が長引くことが、11月の中間選挙を前にしてバイデン氏個人にとって好ましいことでなくなっている。アメリカ国内でバイデン氏は左右両翼から攻撃されている。

一方では、共和党支持者、特にトランプ支持者たちからだ。この人たちは大規模な資金をウクライナに提供することを支持していない。メキシコとの国境警備の資金が不足している、子ども用食品や他の商品も不足していると批判している。

バイデン大統領は大統領就任後の21年2月、トランプ前大統領の公約だった、メキシコ国境の壁の建設を中止しました。その結果、「バイデン大統領は移民に寛容だ」という期待が広がり、アメリカに入国しようとする移民がメキシコ国境に殺到。21年度には約166万人が身柄を拘束され、今年度はさらにペースがあがり、5月には過去最高の約24万人が拘束されました。バイデン政権に非難が集まっています。

米国とメキシコを隔てるフェンス。
写真=iStock.com/ElFlacodelNorte
アメリカとメキシコを隔てるフェンス。

ロシアを「北朝鮮のように制裁をかけたまま孤立」させたいアメリカ

インフレに苦しむアメリカ国民の意識や、トランプ支持者の勢い、中間選挙を意識せざるをえないバイデン大統領など、アメリカの国内事情を深く読んでいることがわかります。そして、戦局がロシアに優位に変わってきたことで、アメリカの筋書きも変わってきていると見ています。

レシェトニコフ】戦局の変化は、アメリカの分析専門家たちも認めている。ドンバスの戦場は、これまでと異なっている。ロシア軍がドニエプル川を越えて西にやってくるかもしれない。さらにその先に進軍してくる可能性もある。だから現状で停戦を提案した方がいい。いずれかの線でロシアと合意して、紛争を凍結する。だから朝鮮戦争のパターンについて(アメリカが)検討する意味がある。
(中略)
朝鮮戦争のヴァージョンだとロシアが勝利することにならないからだ。大部分の領土はウクライナに残る。そして、ウクライナは現在果たしている役割を続ける。ウクライナはアメリカによって管理されている韓国のようになる。緊急事態対応としてこのヴァージョンがある。万一、ロシアが現状を打開してしまう場合に備えてのことだ。

サイムズ】正確を期すためにもう一つ質問したい。韓国・北朝鮮関係との比較は興味深い。イグナチウスは、ウクライナでその後、韓国のような成功が生じると述べている。しかし、ウクライナがそのようになるとは思えない。そして、ロシアが北朝鮮のようになることを提案している。ロシアは制裁によって孤立した状態に置かれる。イグナチウスの前向きの言葉の背後には、そのような思惑が潜んでいるのではないだろうか。

前回の記事でも紹介しましたが、デイヴィッド・イグナチウス氏は今もホワイトハウスに出入りしていて、アメリカ政府の意向を表明するコラムニストとして、非常に有名な人です。

6月2日の「ワシントン・ポスト」のイグナチウス氏の記事、つまり「バイデン大統領はウクライナにおける長期にわたる限定された戦争を準備している」とし、「平和条約がいまだ存在していないにもかかわらず、今日、韓国は世界の経済的成功例の一つになっている。つまり、ウクライナが韓国のように栄え、ロシアが北朝鮮のように制裁がかけられたまま孤立した状態に置かれる」という考察を、アメリカ政府の意向として注目しているのです。