「友達のいない50代」が幸せになれる世界

このモビリティ社会のシナリオについて、別の角度から別の説明をしたいと思います。

「50代以降では友達のいない日本人が過半数だ」という調査があります。確かに私も若い頃は積極的にいろいろなところに顔を出したものですが、歳をとるにつれてつきあいも面倒くさくなってきます。

この歳になって今さら、「なんか新しいこと始めようよ。俺たち2人なら何かできそうじゃん」と誰かに誘われても引いてしまう自分が容易に想像できます。

でも、ただ会いたい人なら500人ぐらいいるのも事実です。小学校のときの親友とか、幼馴染の女の子とか、大学のときのバイト仲間とか、社会人のときによく通っていたお店のマスターとか、同じビジネス案件にかつて敵として関わっていた知人とか。

私の場合、そういった人たちの多くとはたぶんもう二度と会うことなく死んでいくのだと思います。別に友情が復活したり、恋愛が芽生えたり、新しいチャレンジが始まったりはしなくていいのですが、1週間に1人のペースで10年かけて500人とただ話をしてみたいとは思うのです。

「空想に没入するよりもずっといい」と言い切れるワケ

技術的にはSNS上の関係性とGPSの位置情報とスケジュールとで、今よりもスマートにそのようなマッチングができるはず。

人生100年の時代です。ロボカーの出現する未来にそうやっていろいろなところにリアルに連れていってもらえて過去の友人たちに会えるなら、メタバースに没入するよりもずっと人生の後半戦は豊かになる。このようなリアルSNSはロボカーのキラーコンテンツになると思うのです。

自動制御システムを備えた車
写真=iStock.com/Blue Planet Studio
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モビリティ経済とは人と物が今よりもとにかくたくさん動くような未来を設計することだと定義しましょう。当然のことながらモビリティ経済が発展すれば、リアル経済が成長します。

日本人全体が人と会う機会が増えることで飲食店が繁盛して回転率が上がるだけでなく、ファッションにもお金を使うようになるでしょうし、女性の場合コスメや美容家電、スパやエステの消費も増加します。それなりに話題も必要でしょうから情報消費やリアルなレジャー消費も増えることになる。

こうして考えるとモビリティ社会の発展は日本経済にはプラスになることばかりです。

私個人の記憶で言えば、これは1980年代後半のバブルの頃の再来です。それもはじけることがなく楽しい日々が長く続く未来のバブル。みんなが着飾って、みんながお金を使って、それでいてみんなにお金が回ってくる経済です。