日本経済の復活にはなにが必要なのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「私は『日本列島魔改造計画』を提唱したい。そのひとつは、リニア新幹線を国費で福岡まで開通させたうえで、JRに無償で払い下げるというものだ」という――。

※本稿は、鈴木貴博『日本経済 復活の書』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

「L0(エルゼロ)系」のリニア改良車両
写真=時事通信フォト
2020年3月25日、山口県下松市で報道関係者に公開された営業仕様第一世代「L0(エルゼロ)系」のリニア改良車両。

立ち消えになった「12.5兆円」でできたこと

もし12.5兆円あったら、日本経済を復活させるためのどんな改造ができるでしょう。

「12.5兆円って何?」

と思うかもしれませんが、あれです。前回の衆議院議員選挙のとき野党がこぞって公約にあげた10万円の一時給付金の予算です。1億2500万人の国民に10万円ずつ配ったら12.5兆円になるわけです。

給付金が立ち消えになったのでその12.5兆円、他に使い道として魔改造に使えないかと思うのですが、そこでちょっと思い出してみたいのです。「日本列島改造論」のことを。

1972年、故田中角栄元首相が総裁選出馬直前に発表した「日本列島改造論」。

日本列島を新幹線と高速道路で縦横無尽に結び、地方経済を発展させ過疎の問題と公害を同時に解決するという大構想は、戦後日本がさらに発展するビジョンとして国民が大いに期待したものです。

角栄節として知られた有権者へのリップサービスではありましたが、選挙演説の際には「三国峠を切り崩して平地に改造すれば、冬の北風は太平洋に抜けて新潟は雪の降らない住みやすい土地に変わる」といった壮大な話も印象的でした。

田中首相時代には日本列島改造ブームが起きます。青函トンネルが完成したのは当時「金に糸目をかけずに掘れ」と総理が号令をかけたおかげです。ただその後、オイルショックとロッキード事件による田中角栄失脚が起き、日本列島の改造計画はスローダウンして現在に至ります。

日本がダメになる前にリニアを大阪まで通すべき

近未来、2040年の日本が圧倒的かつ未来的に便利になるインフラの可能性が二つあります。

一つは日本中の道路をロボカーが走りまくる未来。そしてもう一つ、これが本稿で取り上げる魔改造なのですが、それは新幹線の倍速で主要都市間を結ぶリニア新幹線開発の加速です。

手始めに日本経済の発展を加速させるためにまだ建設が始まっていない名古屋から大阪に向かうリニア中央新幹線の残りの部分を、勝手に掘り始めてしまいたいと思います。

そもそもリニア中央新幹線は静岡県で建設が止まっているだけでなく、当面、完成しても名古屋止まりだという、日本経済の復活の目玉としてのもう一つのボトルネックを抱えている計画です。

リニア中央新幹線は日本の大動脈である東海道を一直線につなぐ高速鉄道のインフラでありながら、実はJR東海が自力で行う民間プロジェクトとして進んでいます。

東京―名古屋間の工費は約7兆円かかります。それを民間企業が捻出して予算の制約の中で少しずつ行うという事情から、まずは東京―名古屋間が2027年に開業し、それが大阪まで延伸されるのは現時点での予定では早くても2037年だと想定されています。

これが完成すれば東京―大阪間は67分で結ばれます。つまり日本経済の大動脈の時空間が一気に短縮されることになります。ところが開発スキームの問題からそれが遅れ始めている。日本経済全体が凋落した2040年頃にようやくリニアが全線開通するというのでは、日本列島改造論としてはじれったい話です。

ですから、東京―名古屋をJR東海が開発している間に、日本経済復活を加速するために名古屋―大阪間は国の予算で同時並行に完成させてしまおうというのが本稿の提案です。