後悔のない人生を送るにはどうすればいいのか。『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』(アスコム)を出したホスピス医の小澤竹俊さんは「お金持ちや、出世して、順調な人生を過ごした人ほど、死を前にして苦しみを抱える。それは『自分は社会の役に立たない人間』という事実を恐れるからだろう」という――。

※本稿は、小澤竹俊『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』(アスコム)の一部を再編集したものです。

患者の手を握る看護師
写真=iStock.com/MartinPrescott
※写真はイメージです

ホスピス医が見てきた「死の直前に後悔する人」の共通点

私はこれまで、ホスピス医として、人生の最終段階を迎えた患者さんたちと関わってきました。

病気になったり、死が目前に迫ってきたりしたとき、強かった人、多くのものを所有していた人、たくさんのことを成し遂げてきた人ほど苦しみが大きくなりがちです。

かつてバリバリ働いていた人は、体の自由がきかなくなり、トイレに行くことさえできなくなった自分を「社会の役に立たない」「生きていても何の価値もない」と責めるようになります。

お金を持っていた人は、どれほどお金を出しても治すことができない病気があること、死を避けることができないこと、一生懸命ためたお金を、あの世に持っていけないことに気づき、愕然とします。

家族や友人に恵まれていた人は、彼らを残して自分一人がこの世を去らなければならないことに、大変な不安や悲しみを感じます。

そして、「昔の自分はあんなに幸せだったのに、今の自分は誰よりも不幸だ」といった気持ちになり、「弱くなってしまった」自分を嘆くのです。

弱くなったときにこそ、その人の本当の強さが現れる

では、彼らは本当に弱くなったのでしょうか?

答えは、ノーです。

彼らは単に、目に見えるわかりやすい強さを失っただけです。