どうすれば後悔なく生きることができるのか
死が間近に迫った患者さんは、さまざまな後悔や苦しみの中で、初めて自分の弱さに気づき、受け入れ、他人に感謝をしてこの世を去っていきます。
同じように、もし、私たちが元気に生きているうちに自分の弱さを認め、他人に感謝して生きていくことができるとしたら――。より後悔の少ない人生を送ることができるのではないかと、私は思います。
そして、本当に大切なものが何かがわかり、人生の残り時間をその大切なもののために使えるとしたら――。それは、とても幸せなことではないでしょうか。
私は以前、ある若者が、ホスピス病棟などでカウンセリングをされている方に、「なぜ命の限られた人に時間とエネルギーを注ぐのですか」「どれほど関わったとしても、その人は亡くなってしまうのですよね?」と尋ねているのを見たことがあります。
その問いは衝撃的でしたが、私なら、その問いに対しては、「人は誰でも、幸せになるために生まれてきたと信じているから」と答えます。
重い病気にかかったから、この世を去るときが間近に迫っているからといって、その人が幸せを実感してはならないということにはなりません。そして、自分の大切なものに気づき、自分らしく生きていくことに遅すぎるということもありません。
どんな人生を歩んできたとしても、それぞれの人がそれぞれの幸せを実感し、後悔のない人生を送ることはできるのです。
不完全なありのままの自分を受け入れる勇気を持つ
解決できない苦しみを抱えたとき、少しでも苦しみを和らげ、穏やかな気持ちになるために必要なこと。それは、弱い部分も含めて、理想の自分ではない自分、不完全なありのままの自分を認め、受け入れることです。
自分や他人をいたずらに責めるのではなく、頑張ったけれど失敗してしまった自分、本当は完全ではない自分、弱さを抱えている自分を、まずは認めてあげる。それこそが、背伸びをすることも強がることもなく、本来の自分の姿で生きられるようになるための第一歩であり、どんなときでもしなやかに、前を向いて生きられるようになるための第一歩であると、私は思うのです。
しかし、弱く不完全な自分を認め、受け入れるのはとても勇気がいることです。特に弱いとき、苦しみを抱えているとき、人はなかなか自分の弱さを受け入れることができません。
それによって自分の価値を自分で信じられなくなること、「自分は社会の役に立たない人間だ」という事実に直面することを、心のどこかで恐れているからです。